また、北京の教員もこう語る。
「私の学校では夏・冬休みを利用して数カ月間、英語の教員がイギリスの大学に行って勉強します。英語教員は学生を連れてアメリカやイギリス、カナダやオーストラリアに行き、交流イベントに参加します」
とはいえ、こうした教員育成ですべての英語教員が、英語を流暢に話せるようになるわけではない。2001年に教育部は各学校に英語授業に関する「指導意見」を通達している。
この中では、「英語教員が整っていない」地域に対して、視聴覚教材(当時はケーブルテレビの教育番組やDVD、ビデオ、CD、テープなど)を積極的に利用するよう勧めた。
一方、日本でも行われている英語ネイティブの補助教員=ALT(アシスタント・ランゲージ・ティーチャー)制度については、国としては採用せず、いまも各学校が独自に行っている。その理由は、教員が視聴覚教材を活用することを、国として奨励したためである。
この時期中国では、全国レベルの英語検定試験である「Public English Test System=PETS」も創設されたが、この試験は教育部とケンブリッジ大学が共同で研究開発したものだった。
著者が意外だったのは、一見「排外思想」に見える中国が、英語教育に関しては、英語圏の国々に習い、協力を求めるのをいとわなかったことだ。
徹底的な合理主義、実利主義が貫かれている
裏を返せば中国の教育行政には、徹底的な合理主義、実利主義が貫かれていると言えるのだろう。
北京の英語教員に筆者は「日本には『英語を教えられないから』と導入に反対する先生もいます」と質問をしてみた。するとこの教員は苦笑してこう答えた。
「いま北京の子どもは小学校に入る前に英語の基礎を学んでいます。新入生の中で英語に接したことがないという子どもはごく稀ですね。こんな環境なので、『英語ができないから教えられない』と言っている状況ではないですよ。その日本の先生は、頑張って教えるしかないですね」
(第3回に続く)
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