中国は今から20年前に来るべきIT社会を見据え、英語がすべての国民に必要だと決めたのである。この段階で「一生英語を使わない国民がいるのは資源の浪費」という批判は、完全に封じ込められた。
また、「英語は母国語の習得の妨げになる」との批判に対して教育部は、英語教育を行ってきた一部地域での実証実験の結果や、英語を公用語としている非英語圏、EUの英語教育導入状況を調査し、小学校入学前に標準中国語の基礎固めを行えば、英語教育導入は問題ないと判断した。ファクト調査とデータ分析によって教育部は、「英語は母国語の習得の妨げになる」という批判にも反証したのである。
一方で教育部の頭を最も悩ませたのは、「いったい誰が英語を教えるのか」だった。つまり小学校の英語教員不足をどう解消するかだ。これはいままさに日本でも起こっている問題である。
しかし中国はこの問題を着実に克服していった。
教員数全体は変わらないが英語教師は右肩上がり
以下のグラフは中国の小学校教員数と英語教員数の推移である。教員数全体はほぼ変わっていないが、英語教員数が右肩上がりで増えていることがわかる。
(外部配信先ではグラフを全部閲覧できないケースがあります。その場合は東洋経済オンライン本サイトでお読みください)
中国教育統計(2008年以前の「英語教員数」はロシア・日本語を含む。2002年以前はNA)
中国では1980年代まで国として定めた教員資格がなかった。しかし1990年頃から師範学校・大学卒業者を教員の有資格者だと明確化し、教員になる要件を①学歴、②標準中国語能力、③身体検査、④人物評価で決めた。
英語教員は圧倒的に人材不足だったため、まずは英語のできる学生の育成と採用、そして学校内では、英語の得意な他教科の教員を、英語の担任に変えることからスタートした。
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