「2時間ドラマ」が絶滅危機に陥った只1つの理由 面白さの追求を捨てた作品に未来はない

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サスペンスだが、40近い男女のリアルな恋愛モノ(未遂だがラブシーンもあった)でもあり。人々の営みと感情の機微が余すところなく入っている。入れ子になった要素が開かれて、核心に迫っていく「マトリョーシカ」状態。重要なメッセージは「本当の悪人が捕まらない・裁かれない現実への憤り」だ。まったく飽きさせない2時間だったのだ。

見せ方、描き方次第で2時間モノはこんなにも面白くなるのか。マニュアルやお約束を取っ払って、このレベルの2時間モノをどんどん作ってほしいと切に思った。

「海外ドラマ」から学べるところ

海外ドラマが面白いと感じるのは、批評性と多様性があるからだ。世の中の動きに常に敏感だし、ムーブメントや差別問題、政治思想もどんどん取り入れる。日本のドラマにはそれがない。流行はとりあえず追い、時事ネタとおぼしきものは入っても、主語がない。人物に語らせない。だからツルンとした善人ばかりになる。浅いところで「正義の味方」だけを描くので、推しの俳優やアイドルだけを愛でる「ファンのつどい」になりさがっている。作品は決して豊かにならない。

まずは2時間モノ、スペシャルドラマから多種多様な人物とテーマを取り入れてみたらどうかと思う。年収は高くて家庭内地位は低いネトウヨのおっさんとか、左巻きと自然派志向が過激なおばちゃんとか、コンビニで働く生きるスキルの高い外国人留学生とか、清掃センターで人々のゴミから社会を憂う清掃員とか、真の自由を手に入れたホームレスとか、政治と広告代理店の癒着とか、男社会を虚言と詐称で翻弄して要職に成り上がった女帝とか、もうありとあらゆるネタがあるだろうに。

ぜひ2時間ドラマの枠を既存の概念から解放して、「連ドラよりもコクがあるよね」「今までになかった設定だね」と思わせてほしい。

吉田 潮 コラムニスト・イラストレーター

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よしだ うしお / Ushio Yoshida

1972年生まれ。おひつじ座のB型。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News it!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。

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