「2時間ドラマ」が絶滅危機に陥った只1つの理由 面白さの追求を捨てた作品に未来はない

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なぜ2時間ドラマが衰退の一途を辿ったのか。「若い人は耐性がない」と書いたが、そうとは限らない。2時間超えの映画は最後まで観るのだから、時間の問題ではない。「つまらない」からである。先が読める展開、どこかで観たような話だから、2時間もたないのだ。様式美と定番を愛でるほど、若い視聴者は寛容ではない。

そして、「話題にならない」。盆暮れ正月のスペシャルならまだしも、2時間モノの宣伝に、テレビ局はそんなに力を入れていないフシもある。

さらには1回こっきりの放送で、「DVD化もほとんどしない」。どれだけ元がとれるのかと考えると、やはり「予算が絶対的に足りない」としか思えず。

「つまらない」「話題にならない」「DVD化しない」「金もない」って、逆に言えば、もうほとんど「やり逃げ」なのだから、もっと自由なテーマで作ればいいのに。

なぜつまらないのか?

2時間モノの定番は「殺人事件」がメイン。スペシャルドラマにしても、「稀代の悪女」「歴史的な偉業の光と影」か「大スポンサーか大手事務所の肝煎り」が定番。なぜ同じようなモノしか作れないのか。企画書、コピペしてんのかな。ドラマで描く世界が狭すぎて、既視感しか覚えないのだ。

人が死ななくてもドラマはある。事件も解決せず、丸く収まらない不条理な世界が現実だ。巨悪は逮捕されないし、事実の隠蔽と嘘の塗り重ねで日本国家は形成されているし、夫婦や家族が仲良しで幸せとは限らない。人と関わらない・関わりたくない人にも24時間365日のドラマがある。そのへんにドラマはあるし、どんな人でも主人公になりうるはずなのに。まあ、これは連ドラも同じだよね。

愚痴と文句ばかりでは意味がない。もうちょっと建設的な話を。過去10年の間、2時間ドラマのすべてが駄作だったわけではない。面白かった作品も多々ある。

熟年男性の恋を描いた『初秋』(2011・TBS系)、聖職と呼ばれる教師たちの逡巡と苦悩を描いた『ブラックボード~時代と戦った教師たち~』(2012・TBS)、東日本大震災後の異なる境遇の2家族を描いた『時は立ちどまらない』(2014・テレ朝)、誰もが加害者になりうる可能性を示唆する名作『乱反射』(2018・テレ朝系)、警察官になりたい人間のすべてが正義の人ではない『教場』(2020・フジ)。DVDになった作品や映画として上映された作品もあるので、ぜひ観てほしい。

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