だが、ちょっと待ってほしい、その病気になる直前の”病気もどき”こそ体のSOS信号なのだ。この連載では看過することのできない”病気もどき”について医療ジャーナリストの安達純子氏が解説する。
蚊を媒介とする病気
ゴールデンウイーク(GW)は海外旅行へ出掛ける人もいるだろう。また、6月12日からはブラジルでFIFAワールドカップも開催される。海外出張の多いビジネスマンは、時差ボケ防止などの体調管理に慣れているはずだが、旅慣れていないと渡航先で体調を崩しがち。頭痛や倦怠感、食欲不振など、さまざまな症状に見舞われるだけでなく、現地に潜む感染症にアタックされることもある。海外旅行では、生水や生食を介した下痢症になる人が最も多いと言われているが、それだけではない。
東京医科大学病院渡航者医療センターの濱田篤郎教授が警鐘を鳴らす。
「日本人の海外旅行では、最近、蚊を媒介とするデング熱、チクングニア熱、ジカ熱に感染する人が増えています。いずれも急な発熱と発疹が特徴の感染症で、GWに東南アジアやカリブ海など、リゾート地に行く人は特に注意が必要です。中でも、デング熱は毎年250人前後の輸入感染症例があります。つまり、帰国後に発症した事例です。いずれのウイルスも昼間に刺す蚊を媒介としますので、虫除け剤などを活用して蚊に刺されないようにしましょう」
虫除けには、長袖や長ズボンの着用が望ましいが、南国のリゾートは短パンやTシャツが当たり前。このとき忘れてはいけないのが虫除け剤で、日焼け止めの上から使用するのがコツ。さらに虫以外でも注意が必要なことがある。
「東南アジア諸国では、5月から雨季に入り、インフルエンザがはやります。日本では冬場にインフルエンザがはやりますが、東南アジア諸国では雨季がシーズンなのです。うがいや手洗いをこまめにすることで、感染予防を心掛けてください」(濱田教授)。
ワクチン接種が必要なことも
FIFAワールドカップの開催地、ブラジルにもデング熱などを媒介する蚊はいる。しかも、命に危険が及ぶ黄熱やマラリアなどのウイルスや原虫を持つ蚊もいるので注意が必要だ。もっとも、黄熱やマラリアは、ブラジル内でも流行している地域とそうでないところはある。むやみに怖がる必要はないが、用心に越したことはない。ちなみに、日本チームの試合は、レシフェ、ナタール、クイアバで行われるが、黄熱の感染リスクが高いのはクイアバ。
「試合だけ見て帰ってくるような短期ツアーの方は、虫除け剤だけの予防でも十分だと思います。しかし、サッカー場以外の観光もする方は、事前に黄熱ワクチンの接種を受けたほうが無難です。マラリアにはワクチンはありませんが、長期滞在する方には、治療薬を少量服用する予防内服もあります。事前のワクチン接種などを希望される方は、最寄りの検疫所などに問い合わせてみてください」(濱田教授)。
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