初ゴール後もいつもの姿勢と変わらず
こんなことで一喜一憂するなよ――。まさにそう言っているかのようなポーカーフェースだった。
4月7日、32節のジェノア対ACミラン戦後、本田圭佑はセリエA初ゴールを決めたにもかかわらず、“お立ち台”を辞退した。イタリアのTV局『sky』がヒーローインタビューを申し込んだが、本田は広報を通して断ったのである。
ジェノアのスタジアムは、ロッカールームから駐車場に直接出られるため、選手はミックスゾーンを通らなくてもいい構造になっている。ただし、駐車場へ出るところは、記者も目にすることができる。出口から現れた本田に「ゴール、おめでとう!」と声をかけると、背番号10は軽く会釈をした。しかし、表情はまったく崩さない。
ここで浮かれていたら次はない。そんな決意がにじみ出ていた。
本来、このコラムは、W杯に向けて日本代表を厳しく批評するのが主題だ。前回はザックジャパンの不安材料を取り上げ、選手の「わかったつもり」と監督の求める水準にズレがあることを指摘した。だが、今回ばかりは、ミランの10番を背負う日本代表のエースを、評価せざるをえないだろう。
ジェノア戦において、本田は右MFとして先発すると、後半11分に大きな仕事をやり遂げる。縦パスをワンタッチで流して裏に抜け出し、相手GKより先にボールを触って、ボールをゴールマウスに流し込んだ。アウェーでの貴重なだめ押し点(結局、本田のゴールが決勝点に)。この初得点によって解き放たれたかのようにプレーが大胆になり、発想力を存分に発揮した。間違いなく最優秀選手のひとりだった。
タイミングのいいことに、筆者はジェノア戦の5日前に本田と話す機会があった。取材のメイン部分は他媒体で執筆する予定だが、そのときに交した会話の中で、今だからこそ意味があるものをここに記したいと思う。
取材は31節のキエーボ戦の直後だったため、本田がGKと1対1で決められなかった場面に話が及んだ。バロテッリから最高のパスが来たがシュートをミートできず、絶好機を逃してしまった場面だ。試合後、チームメートが肩に手を回して慰めるほど、悔やまれるミスだった。
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