本田の初ゴールに学ぶ、W杯に不可欠なこと 小さな成功で喜ぶと、大きな成功はない

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W杯本番への教訓

2つ目は、冒頭でも書いたように、「一喜一憂しない大切さ」だ。

試合後に冷静になって考えると、本田がなぜ『sky』のインタビューを断ったのか、その真意がわかるような気がした。

取材を受ければ、当然、質問とともに祝福を受ける。面と向かって繰り返し褒められたら、いくら強靭なメンタルを持っていても、気の緩みは生じてしまうだろう。そうなるとせっかく生じた上昇気流が、乱気流になりかねない。

先日のコラムで書いたように、本田は「試合が終わった瞬間、次の試合への準備が始まっている」と考えている選手だ。言い換えれば、いい結果が出た日ほど、気を引き締めるべきということだ。

昨年11月のベルギー遠征後(日本はオランダに2対2で引き分け、ベルギーに3対2で勝利した)、本田はこう語った。

「勝ったときというのは、よかった点に目を向けるのではなく、悪かったところに意識を向けなけないと。そういうときこそもっと徹底的に、今後、懸念される材料をしっかり洗い出さないといけない。負けた後に楽観的になるのは全然OKなんですけどね」

これをW杯に当てはめるなら、たとえグループリーグ初戦で勝ったとしても、ポーカーフェースを崩してはいけない。小さな成功で喜んでいたら、大きな成功など成しえないのだ。

本田的志向でジェノア戦のプレーを振り返れば、まだまだボールを失う回数が多いし、味方とイメージが合わない場面がある。何より、まだ背番号10として君臨しているとは言えない。

W杯が迫ったとしても、本田はミランにおいて失敗を恐れず、どんどん変化するはず――。個人的にはそう予想しているし、そう期待している。ミランで身に付けた新たな武器が、きっとW杯で役に立つはずだから。

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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