下痢で家族も感染
ゴールデンウイークなどでの海外旅行では、帰国後に体調を崩してしまう人がいる。時差ボケで眠れない、睡眠不足でだるいだけでなく、下痢症状に見舞われるのも珍しくはない。1日4回以上、ひどいときには20回以上もトイレへ。そんな渡航者下痢症は、帰国後、数日以内に発症し、水様性下痢の症状を引き起こす。旅行者の病気では、最も多いと言われ、現地の生水や生ものから感染しがち。だが、たかが下痢と侮ってはいけない。
東京医科大学病院感染症科診療科長の水野泰孝准教授が警鐘を鳴らす。
「渡航者下痢症の原因はさまざまです。たとえば、細菌性赤痢は感染力が高く、帰国した人が軽い下痢の症状でも、お子さんなどの家族に感染を広げてしまうようなことがあります。現地で感染予防をするだけでなく、帰国後に体調が悪いときには、早めに海外の感染症に精通した専門の医療機関を受診するようにしましょう」
一般的な食中毒菌は、数万個という膨大な数が体内に入らないと感染できない。少なくとも数千個は必要。ところが、細菌性赤痢は、数百個程度と少ない量でも感染するため、家庭内などで感染を広げやすい。大人は症状が軽いこともあるが、抵抗力の弱い乳幼児などが発症すると、脱水症状により命の危険が及ぶこともあるので注意が必要だ。
「下痢症状を起こす細菌としては、サルモネラ、カンピロバクター、コレラなどもあります。しかし、サルモネラの一種であるチフス菌による腸チフスは、下痢症状よりも40度程度の発熱、皮膚の湿疹などが特徴的で、重症になると腸出血や腸の壁に穴が開き、命の危機に及ぶことがあります。下痢症の中にも、危険な感染症が潜んでいることを覚えておきましょう」(水野准教授)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら