医療財源の圧迫を背景に脱ドメスティックを迫られる医療業界と、脱資源エネルギー依存を図りたい総合商社の思惑が、東南アジアを舞台にしてかみ合い始めている。
日本に限らず、アジアは高齢化が進行中。世界全体で現在約5億人の高齢者は、2030年ごろには約10億人に倍増。そのうち約6億人は中国、インドを中心とするアジア人が占めるといわれている。
こうした人口統計的なトレンドに先手を打つべく、三井物産がアジア最大手病院グループ IHH社へ900億円の出資参画を行い、9月には日本の医療技術を提供する専門クリニックを開設した。
巨額の投資を通じて、同社は何をしようとしているのか、そしてそのうまみはどこにあるのか。同事業のトップから現場レベルに至るまで取材を重ねると、その全貌が見えてきた。
日本の医療業界が迫られる「脱ドメスティック」
9月26日、シンガポール・ノビナにあるMount Elizabeth Novena Hospitalで、ある専門クリニックの開所式が開催された。神戸国際フロンティアメディカルサポート(以下、IFMS)と、三井物産が100%出資するMedicro Partnersが共同で開設した生体肝移植・肝臓疾患専門のクリニックだ。
IFMSは生体肝移植の世界的権威である田中紘一・京都大名誉教授が理事を務める一般社団法人。同氏の指導を受けた日本人専門医がシンガポールに常駐し、年間20~30件の生体肝移植手術を実施するほか、移植技術やノウハウの共有、医師の指導、教育などを行う。
トピックボードAD
有料会員限定記事
政治・経済の人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら