三井物産が900億かけて医療を輸出するワケ 狙う10兆円市場 「メディカルツーリズム」の全貌

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アジア・大洋州三井物産 メディカルヘルスケア事業室 室長の櫻井敏治氏

一方、同社が医療分野に注力する背景にはもうひとつ、脱資源エネルギー依存がある。同社に限らず総合商社は「資源商社」と揶揄されるように、その収益の大部分を資源エネルギーが占めるものの、マーケットのボラティリティ(変動性)は新興国の台頭などにより増し、収益源としては不安定だ。

こうした背景から、総合商社は新たな付加価値を非資源の分野で開拓する必要に迫られた。そのタイミングと重なるようにKIFMECの田中医師との出会いがあった。

狙うは13兆円の「メディカルツーリズム」市場

脱ドメスティックを迫られる医療業界と、脱資源エネルギー依存を図りたい総合商社、その両者が東南アジアの医療事業で狙うのが「メディカルツーリズム」市場だ。

メディカルツーリズムとは、医療サービスを受けるために居住国とは異なる海外の国や地域を訪れること。日本のような先進国では、タイで安価な美容整形手術を受けるようなケースしか想像できないかもしれない。ところが、日本以外の国では美容整形に限らず、先進的な医療サービスを受けるために海外に渡航する富裕層が増加しているのだ。

アジア主要国におけるメディカルツーリズム市場は、2012年度が約10兆円規模、三井物産はこれが2015年度には約13兆円規模にまで拡大すると見込んでいる。ターゲットは、中国やインド、ベトナム、インドネシアなど、マレーシアやシンガポールから飛行機で8時間圏内にある国からの患者だ。

この市場の成長性への期待は、人口統計的にもうなずける。日本に限らず、アジアは高齢化が進展しており、同社の推計では、世界全体で現在約5億人の高齢者(65歳以上)は、2030年頃には約10億人に倍増。そのうち約6億人は中国、インドを中心とするアジア人が占めるという。

さらに、2030年には世界の人口80億人のうち約6割に相当する約50億人が、アジアに集中するとの試算もある。東南アジアには巨大な金脈が潜んでいる。

市場の爆発力を牽引するのが、アジア各国における富裕層(世帯年間可処分所得3万5000ドル以上)の増加だ。2020年には中国がその数で日本を大きく抜き、インドも日本の半数を超えると予測。また、ライフスタイルの変化に伴い、感染症などの急性疾患から、より成人病などの継続的な治療を必要とする慢性疾患へと、先進国同様の傾向を示すようになってきている。

こうした市場の将来性を見込んで、同社はアジアをはじめ世界中に病院を展開するIHH社に出資参画しているのだ。

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