つんく♂「僕が絵本作りに込めた母と子の絆」 敏腕プロデューサー・3児の父が語る子育て

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だから物語の前半、母親は顔を見せずに登場。母親が泣き出したところで初めて顔が見える。読者がお隣さんの出来事と思って見ていたのが、ここで読者と視線が合って自分ごとに感じる。これはテレビの音楽番組で、歌手がサビを歌う部分で視聴者と目が合って引っ張り込まれるようなカット割りと同じようなイメージです。

わざわざ製本された本を買う必要のない時代、そんなご時世にわざわざ本にするのだから、記念にするような絵本にしたいという気持ちもありました。

「絵本であたらしい出会いもあり、モーニング娘。のメンバーが朗読してくれたり、いろんな意味で楽しめています」(写真:つんく♂さん提供)

自粛要請の中、ちょくちょく見聞きした話の1つに、「ずっとコミック(漫画)を読んでいた」「本を読んでいた」「ビデオ(映画、ドラマ)を見ていた」ということがあります。自粛しているので本来は買い出しに行けないけど、オンラインでのサブスク利用で、誰にでもある程度の金額でいくらでも欲しいものが手に入る世の中になっています。

そんな時代ですが、絵本は手にとって温もりを感じるものであり、どんなに時代が進んでも必要なものだ、という考えで作り始めました。そもそもは時代に対してアナログな絵本を作ろうという、時代に逆行した発想ではありましたが、絵本を動画にして無料でアップしたことで、さらなる結果として新しい絵本の形に近づいたな、と思っています。

僕の場合、2015年に喉頭がんのため声帯を失ってからを軸に、以前と以降では生活スタイルがガラっと変わりました。闘病を支えてくれた最愛の家族と触れ合う時間も増えたことで、いままで見えなかった世の中の景色が見え始めてきて、作品作りに大きな影響を与えるようになったと思います。

40年前の12歳も今の12歳もそんなに変わっていない

子どもはなんだかんだ言いながらも親の顔色を見ているわけで、逆に言えば、親も子どもを「この場面でだけでも静かにしてて」という時、親都合でスマホを渡したり、ゲームさせたりしがちです。だけど、本当は親からしたらありがたくも面倒くさい部分、要するに子どもらしいピュアな面を、本当は伸ばしてやらなきゃいけないんでしょうね。

僕が自分の長男・長女と同じ12歳だったときのことを思い返すと、当時どんなことを考えていたのか、よく覚えています。今が51歳なので約40年前ですね。もちろんスマホもパソコンもない時代。YouTubeもなかったから今とは全然違うけれど、頭の中のOS(基本ソフト)というか知能自体は40年前の12歳も今の12歳もそんなにきっと変わっていないと思います。

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