これが今年の株主総会の”標準”となるのだろうか。主要な3月期決算企業のトップを切って6月11日に株主総会を開いたトヨタ自動車。コロナ禍とあって運営方法は様変わりした。
会場となったトヨタ本社の入り口ではフェイスシールドを着けた社員が株主の体温計測を行い、37.5℃以上の株主には入場を断る対応を取った。また、座席数は昨年の3分の1に減らし、株主同士の間隔を確保。登壇者と株主のマイクの前には飛沫感染防止用のパーティーションを設置したほか、質問者が変わる度に株主用のマイクのスポンジを交換するほどの念の入れようだった。
株主総会への来場見合わせを強く推奨し、郵送やインターネットによる議決権行使を呼びかけた結果、今年の出席株主は361人。過去最多だった昨年の5546人の1割にも満たなかった。
黒字見通しの重みを何度も強調
「リーマンショックを上回るコロナ危機が世界を覆った。あくまでも見通しに過ぎないが、トヨタは赤字には陥らないというメッセージとともに世の中に1つの基準を示すことができた」
豊田章男社長が総会の場で、かつてない逆風が吹きつける中で「黒字維持」という見通しを出した意味を何度も強調した。
トヨタは5月12日に2020年3月期決算を発表し、2021年3月期の業績予想も開示。連結販売台数は前期比22%減(195万台減)となる700万台を想定する。リーマンショック後の2009年3月期にトヨタの販売台数は756万台(前期比15%減)となり、営業利益は4610億円の大赤字に転落した(2008年3月期は2兆2703億円)。
今回の販売台数見通しはリーマンショック後を下回る厳しい前提で、収益構造がかつてのままならば大赤字に転落する。だがそうはならず、会社計画の営業利益で5000億円(前期比80%減)を見込む。
その理由について、「リーマンショック時に比べて、200万台以上損益分岐台数(収支が均衡する販売台数)を下げることができた」(豊田社長)と述べ、社長在任11年で企業体質の強化がに進んだことを訴えた。
だが、総会場である株主が、”直球”の質問を豊田社長にぶつけた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら