トヨタが株主総会で見せた「一強」へのこだわり リーマンショック後に進めてきた体質強化を強調

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そうした中、トヨタは2020年4月に複数の国内金融機関から総額1兆2500億円の新規借り入れを行っている。これは自社のためというよりかは、むしろグループ企業を含めた仕入先の支援が念頭にある。トヨタ幹部は「いざという時にトヨタが後ろ盾になる」と話す。

自動車業界内には、株主が指摘するような「トヨタの一人勝ち」を指摘する声は少なからずある。実際、近年はマツダやスズキとも資本業務提携し、広義の”トヨタ連合”が拡大しつつあり、日本の自動車業界で「トヨタ一強」の構図が強まっているのは確かだ。

この先、業況が予想以上に悪化した場合、トヨタが取引先に財務的支援を含めてどのようなサポートを行うのかは重要なポイントになる。

『勝ち』を何に使っていくのか

株主からの「一人勝ち」への質問に豊田社長は、「一人も勝たなかったらこの国はいったいどうなるんでしょうか。一人でも勝たないとこのインダストリー(自動車産業)は支えられない」と語気を強めた。

そして、「一人勝った会社がその『勝ち』を何に使うのか。今のトヨタは自分のためではなく、世の中のため、トヨタを普段から応援頂いている方々のために、その強さを使いたいと思っている」と続けた。

トヨタはこの厳しい環境下でも1兆円規模の研究開発費や設備投資を維持する方針。電動化や自動運転など将来への投資を確実に行わなければ、「一人勝ち」もままならないという危機感の裏返しだろう。

コロナ危機をトヨタグループのみならず膨大な数の部品会社や販売店と共ににどう乗り越えるのか。黒字見通しを出した今期の経営の舵取りは、ある意味でリーマンショック時以上の難しさがあるかもしれない。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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