星野リゾートが徹底重視するお客さんの「悩み」 星野佳路代表が語るアフターコロナの経営戦略

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三密回避の対策に加えて、大がかりな市場調査を行うと話した星野佳路代表。写真は2019年(撮影:今祥雄)
5月に全国で緊急事態宣言が解除され、レジャー活動が再開されつつある。一方で、新型コロナウイルスは第2波の懸念をぬぐい去れず、いまだに見通しは不透明だ。
なかでも宿泊業界はここ数カ月、中小零細企業の経営破綻や廃業が相次ぎ、急激な需要減のあおりを食っている。営業を続けるところも、7月から取り込めるはずだった東京オリンピック期のインバウンド特需が消滅したため、苦しい状況が予想される。
難しい経営の舵取りを迫られる宿泊業界における生き残りのカギは何か。星野リゾートの星野佳路代表に展望を聞いた。


――国の緊急事態宣言が解除されてから、各施設の利用状況はどうですか?

悪くない。4月7日に発令された緊急事態宣言を機に予約のキャンセル数が爆発的に増加したが、足もとで予約数が通常の水準に戻りつつある。例えば「奥入瀬渓流ホテル」(青森県十和田市)は渓流と楽しむ屋外でのアクティビティが売りのため、「密」にあたらず、だいぶ予約状況が良くなってきた。

一方で「密」になるお祭りをコンセプトにした「青森屋」(青森県三沢市)の予約はまだ戻ってきていない。このように各施設で差はあるが、だいたい全体の4分の3の施設で予約動向が良くなってきている。

7月、8月は今、予約が入ってきている。コロナ感染の第2波が来るにしても、日本観光のシーズンである夏休みと紅葉の時期までにそれが来ないと、だいぶん助かる。

――今年3月にインタビューした際、「夏に国内旅行市場が盛り上がる」と話していました。見込み通りになりそうですか。

そうですね。ただ、ゴールデンウィークの稼ぎを失ったことは、観光産業にとって大きな痛手だ。もし夏休みも稼ぎを失っていたら、本当に深刻な打撃だった。もちろん、平時の水準まで売り上げが回復するとは思っていない。4月、5月と昨年比9割減だったところから、7月、8月には2~3割減ぐらいに戻るのではないか。

「マイクロツーリズム」がメインになる

うまくいけば、昨年比で100%まで戻る施設も出てくるだろう。熱海のリゾートホテル「リゾナーレ」や軽井沢のラグジュアリーホテル「星のや」、箱根や鬼怒川、伊東の温泉旅館「界」などだ。

――どれも首都圏近隣の施設ですね。

基本的にコロナ期の旅行は、自宅の周辺地域を自家用車で訪れる観光「マイクロツーリズム」となるだろう。

これらの施設は、東京という巨大都市がマイクロツーリズムの圏内に入っており、その需要を取り込みやすい。2020年3月に開業した山口県長門市の「界」も、意外とマイクロツーリズムに強い。これは福岡という大都市があり、広島からも集客できるためだ。

問題は周辺人口が少なく、マイクロツーリズムで採算を取りにくい場所。例えば青森の施設は岩手の盛岡までをターゲットにしても、かなり人口が少ない。一番大変なのは沖縄で、車で行ける大都市が那覇しかないため、非常にマイクロツーリズムの需要を取りにくい。こういった施設は前年の水準まで売り上げを戻し切れないだろう。

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