――星野リゾートは地方の旅館やリゾートホテルだけでなく、東京都内でインバウンドが主要客層だった都市型ホテルも運営しています。
一番厳しいのは東京かもしれない。多くの人が夏はリゾートへ旅行に行きたいはずだが、東京に温泉旅館やビーチといったリゾートのイメージはない。夏の東京に行く必要はないし、あまり行きたいと思わないだろう。ゼロになってしまったインバウンドの比率が高かったことも含めて、東京は悪い材料が重なっている。
――さきほどマイクロツーリズムの話もありましたが、今後のお客さんのニーズの変化やマーケットの状況を見るうえで、何が重要になってくると考えますか。
単に(コロナウイルスの)恐怖でどこにも出ないという状態から、
そこから先については、大がかりな市場調査を計画している。
――具体的にどのようなものですか?
最初のスクリーニング段階で、旅行に行きたい、迷っている、絶対行かないという3択で選んでもらう。そして「迷っている」という人に対して集中的にいろいろな調査を行う。迷っている人にどういうオファーをすると安心して旅行に出るのかを把握していく。その調査を踏まえて3密回避の次のステップの対応を考えていきたい。どの顧客のどんなニーズに応えていくかを探る調査にしていく。
迅速な復活に欠かせないこと
――今回のコロナがビジネスモデルに与えた影響は何かありましたか。
雇用調整助成金によりコロナ期のホテル経営に大きな変化が起きている。固定費の大部分を占める人件費が変動費化しているからだ。
通常、星野リゾートの正社員は週休2日と定まっているため、月に22日ぐらいは出社してもらわないといけなかった。ところが、雇用調整助成金が活用できる間は(従業員を休業させても助成が出るので)、「今日は5人、次の日は20人」と、日によって人件費をコントロールできるようになった。
重要なのは雇用調整助成金で損益分岐点が下げられると理解し、客が少なくても営業することだ。これまで用いてきた月当たりの予算は意味がなくなってくるので、毎日の採算意識を社内で徹底している。われわれのような(固定費の重い)サービス産業も、発想を変えなくてはいけない。
――観光関連企業を取材すると、日銭商売という特性上、客数減による手元キャッシュの減少に苦しんでいるところが多く見られます。ここ3カ月は運転資金の急減や、それに伴うリストラの検討をされましたか?
自粛期間が2年続いたらヤバいと思ったが、4月、5月でキャッシュが危ういなんていうことはまったくなかった。私は何かの所有や投資にお金を使いたくない性格で、タンス預金に近い感覚でグループとしてキャッシュは持っている。所有しなければ、借金をする必要もない。
そのため、雇用に手をつけることも考えていない。それは解雇しないことを前提にしている雇用調整助成金のメリットを最大限活用するためのみならず、コロナが終わったときの復活においてとても大事だからだ。(ワクチンや治療薬ができていると見込まれる)2年後にどのぐらいスピーディーに復活できるかは、いい人材をどのぐらい維持できたかにかかっている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら