「星のや東京」が引っさげる“3密回避策"の中身 今、注目される「マイクロツーリズム」とは?
新型コロナウイルス問題で、大きな痛手を受ける旅行・観光産業。旅館・リゾート運営大手の星野リゾートも例外ではない。今年4~5月期の需要は通常比、8~9割減という状況だった。現在も42施設のうち、6施設が休館している。
このような危機的状況にどのように立ち向かうのか。最近、星野佳路代表が各メディアで語り、キーワードとして注目されるのが、「マイクロツーリズム」と「3密の徹底回避」だ。現場では、どのような取り組みが行われているのか。4月29日から営業を再開している「星のや東京」を中心に取材した。
マイクロツーリズムとは?
星野代表は、今後の旅行・観光の需要回復には、3つの段階があると言う。最初の段階では、周辺地域を旅行するマイクロツーリズムが回復。次に回復するのが飛行機や新幹線などを使った大きな移動を伴う旅行、最後に戻るのがインバウンドとなる。
マイクロツーリズムというのは、その意味するところはわかるものの、聞き慣れない言葉だ。星野リゾート広報責任者の森下真千子氏に、より具体的な定義を聞くと、「緊急事態宣言が解除されたとはいえ、とくに都市圏では今も都道府県境をまたいでの移動が自粛される段階。こうした中、自家用車またはタクシーを使って自宅から30分~2時間程度で移動できる圏内のお客様の需要を掘り起こすためのマーケティング戦略」だという。
これを「星のや東京」に当てはめれば、対象は主に東京都内に住む人たちということになるが、コロナ以前、同施設では、近隣住民は主な利用者として想定していなかった。つまり、「星のや東京」においては、マイクロツーリズムの推進は新たな顧客層の掘り起こし作業ということになる。では、今後、どのように訴求し、需要を喚起していくのだろうか。
「『近さ』や『価格』の訴求だけで、新たなお客様に来ていただけるとは思っていない。今現在、私たちが最重要な価値として位置づけているのが、安心・安全のご提供だ。
ご自宅から自家用車またはタクシーを利用いただき、ドアツードアで地下駐車場に起こしいただいた後、直接、お部屋にご案内し、チェックインもお部屋で済ませる。人との接触を最小限とする3密回避を徹底した条件下で、非日常的な温泉旅館の滞在を味わっていただく。自粛、ステイホームでストレスがたまったお客様には、これだけでも十分な『サービス』と感じていただけるはずだ。
加えて、地域から学び、『地域を再発見』するという価値も、マイクロツーリズムの訴求ポイントとして提唱していきたい。地元の人ほど、地元のことを意外と知らないということがある」(森下氏)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら