「星のや東京」が引っさげる“3密回避策"の中身 今、注目される「マイクロツーリズム」とは?
では、「3密回避の徹底」という部分に関しては、具体的にどのような施策を行っているのだろうか。
まず、3密が最も懸念される大浴場での対策として興味深いのが、客室にいながら自分のスマートフォンで大浴場の混雑状況が確認できる「3密の見える化」サービスの導入だ。仕組みは比較的単純で、大浴場の入り口に設置されたセンサーで、入室と退室の人数をカウントし、スマホに混雑状況を表示する。
「このサービスにより、お客様にわざわざ浴室まで足を運んでいただかなくても、混雑状況を確認いただける。浴場の3密は、(星野)代表も懸念している点であり、3月末から自社設計でサービス開発を進めてきた。導入時期は、『界』ブランドの各施設等では6月1日から、『星のや東京』は6月中旬からの予定だ」(「星のや東京」総支配人の赤羽亮祐氏)
次に食事はどうだろうか。「星のや東京」では、これまで地下のダイニング(レストラン)での食事をメインとしてきたが、営業再開後は、夕食・朝食ともに部屋食を選択できるようになった。また、これまでは料理の内容を1品ずつ丁寧に説明していたが、この説明を省き、お品書きに食事の詳細を書くオペレーションに変えた。料理を部屋に運んできたスタッフは、テーブルを消毒し、料理とお品書きを置くと、速やかに部屋を退出する。
ちなみに、部屋食の需要に関して赤羽氏は、「ダイニングと部屋食のご要望は、だいたい半々の印象。当施設のダイニングはすべて個室または半個室で、元々、3密は避けられる設計になっているが、それでも不安というお客様に部屋食は好評」と話す。
さらに、滞在中に、豊富なアクティビティを体験できるのも、星野リゾート各施設の大きな魅力だが、現在は、アクティビティの数自体を減らしている。
「星のや東京」において、現在も体験できるのは、剣術の型をベースにしたストレッチ「めざめの朝稽古」と、日本各地の日本酒の利き酒ができる「SAKEラウンジ」の2つのみだ。
このうち、「めざめの朝稽古」は、これまで屋内で行っていたのを屋外に切り替え、人数制限をかけて実施している。
また、「SAKEラウンジ」は、実施時間を延長することで密集を避けるようにした。
地域課題の解決も
なお、星野リゾート全体では、マイクロツーリズムの推進を通じて地域の課題も解決すべく、地元の人たちとの関係をより深める取り組みも行っていくと森下氏は話す。
「これまで以上に地域文化の作り手とのネットワークを強め、地域課題の解決に少しでも貢献していきたい。例えば、那須エリアの酪農家さんでは、学校給食の停止などから牛乳のフードロスの問題が発生している。この余った牛乳を活用し、『牧場を救うミルクジャム』という製品を開発し、これを栃木県内の各施設で使用する。また、青森では、今年は『ねぶた祭』が中止されることになったが、制作している『ねぶた』の行き場に悩む製作者さんとの共同イベントを青森屋で開催する」
こうした取り組みは、マイクロツーリズムの訴求力を高めるだけでなく、地域の共感を呼ぶことにもつながりそうだ。
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