「星のや東京」が引っさげる“3密回避策"の中身 今、注目される「マイクロツーリズム」とは?

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さて、緊急事態宣言は解除されたものの、東京では6月1日から4日連続で2桁の新規感染者が出るなど(6月5日の原稿執筆時点)、予断を許さない状況が続く。このウィズコロナ時代には、どのような旅館運営が求められるのか。赤羽氏は、再開後約1カ月間営業してきたことで、今後に向けての課題が見えてきたと話す。

「星のや東京」総支配人の赤羽亮祐氏(筆者撮影)

「不安を抱えつつ営業再開したが、予想以上に、安心・安全それ自体を『サービス』として捉えてくださったお客様が多かった。しかし、5月中旬から自粛緩和のムードが広がり始めると、コロナ以前の『星のや東京』を知るお客様からは、『この状況を考えれば十分楽しめたけれども、以前と比べると、やはり物足りない』というお声が聞かれるようになるなど、お客様のニーズの変化の早さを肌で感じた。

今後も、自粛と緩和が繰り返されるウィズコロナの状況がしばらく続くと思われるが、3密回避を大前提としたうえで、状況に応じて、柔軟に接客の距離感やサービスのオペレーションを変更するなど、われわれの適応力を高めることが課題となる」

旅館再生ファンド立ち上げ

最後にもう1つ、重要な話題を記しておきたい。コロナ対策に関連して、つい先日、急浮上した、総額100億円規模というホテル・旅館再生ファンドの立ち上げについてだ。

地域活性化ファンドに豊富な実績のある投資会社リサ・パートナーズと星野リゾートが共同で、ファンド運営会社H&Rアセットソリューションズを設立。8月を目標にファンドを組成し、国内機関投資家等を中心に資金を募る。コロナの影響で、経営危機に陥った宿泊施設をファンドが取得・保有し、星野リゾートは、必要に応じて宿泊施設の運営または経営改善支援を担う。当該ファンドの目的について、森下氏は以下のように話す。

「観光産業がようやくここまで育ってきて、日本全体で観光や宿泊業界に携わる『観光人材』も育っている。今回のコロナ問題でホテル・旅館がなくなれば、こうした人材まで失うことになる。弊社のノウハウを生かして事業継続を支援することで、観光人材の雇用を維持し、いずれインバウンドが戻るなど観光需要が高まったときに活用可能な状態にしておかなければならない」

今回のコロナ禍は、これまでの旅行・観光業の色を塗り替えるほど大きな影響があり、一時的に産業規模縮小が余儀なくされるだろうが、長期的に見れば、日本にとって旅行・観光業が成長産業であることに変わりはない。アフターコロナを見据えて、せっかく鍛えてきた旅行・観光業の筋力を維持するための施策が始まっている。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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