足りない賃料補助、飲食店を追い込む遅い政治 少なすぎる経済援助が現場を苦しめている

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練馬区の創業40年の老舗「らーめん太陽」厨房。店主の悩みは深い(記者撮影)

「5月は家賃を遅れずに払えるだろうか、従業員の皆さんにお給料を払えるだろうかと、今はそのことで頭がいっぱい」。東京都練馬区にある創業40年の老舗「らーめん太陽」。5月上旬、数人しか客のいない店内を見渡しながら、店主はつぶやいた。

1杯480円という安さにもかかわらず、煮干しベースで丹念に作り込まれた和風ラーメンは地元の人々に大人気で、お昼時は勤め人や近所の大学の学生たちでごった返してきた。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大で事態は一変した。客足は遠のき「1時間に1人という時間帯も出てきた」(店主)。3月の売上高は前年同月比で3割減、緊急事態宣言が発令された4月に5割以上の減収が確定的になると、資金繰りが一気に悪化した。

「家賃は毎月必ず25日に振り込んできたのに、4月は3日遅れて28日になってしまった。従業員にお支払いする給料分の資金が足りなくなったので、学生アルバイトの方々に先にお支払いし、ほかの方には少し待ってもらった」(店主)。ギョーザのテイクアウトを始めるなど、少しでも売上高を増やそうと必死だ。

店主が命を絶った店も

らーめん太陽の店主には気になっていることがある。同じ練馬区にある老舗とんかつ屋「まるとし」の店主が焼身自殺をしたのだ。「まじめな方で、商店街の理事もしていたと聞いている。先が見えずに、苦しかったのではないだろうか」。

4月30日夜に店主が自殺した練馬区のとんかつ店。5月1日から店を開けるべく準備していたようだが、再スタートすることなく自ら命を絶った(記者撮影)

シャッターが下り、軒先には花が手向けられている。まるとしに火の手が上がったのは4月30日の午後10時ごろ。焼け跡から店主の遺体が発見された。自ら油を浴びた形跡があったという。

緊急事態宣言の発令後は店を休業するも、周囲には5月1日に営業を再開する意向を示していた。4月30日といえば国民1人10万円の給付金や事業者向け持続化給付金の予算を盛り込んだ第1次補正予算案が国会で可決された日。

国民の暮らしや中小事業者の存続のために重要な予算執行が決まった日だが、同時に、賃料負担に苦しむ飲食事業者にとっては待望の賃料支援策の先送りが決まった日でもある。

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