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東京メトロ「時価総額1兆円IPO」でも熱狂なき理由 「最強私鉄」が抱える弱点と見えない勝負手

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東証メトロIPO
10月23日午後、東京証券取引所で行われた上場セレモニーの様子。中央が東京地下鉄の山村明義社長(撮影:尾形文繁)

特集「東京メトロ 20年越しの上場」の他の記事を読む

民営化から20年。株式上場をようやく果たした東京地下鉄(東京メトロ)の過去と現在から見えてくる未来とは――。シリーズ1回目の記事では上場までの経緯と今後の課題を追った。
※本記事は2024年10月25日23時まで無料で全文ご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。
【今後の配信予定】
10月24日 メトロの「遣唐使」が持ち帰った不動産戦略の妙手
10月25日 「東急と西武に次ぐ」時価総額、メトロ株価は割高?

「今は熱狂というより、社内には若干の不安感もある。上場後の経営がどうなるのか、気にかけている社員が多い」

東京地下鉄(東京メトロ)のIR室長、市川裕信氏が口にしたこの言葉は、同社の株式上場をめぐる現状を象徴している。

ある東京メトロOBも、こう述べる。「社内は上場に対して冷めた感じがあるように思う。なぜ上場するのか、ピンときていない社員もいるのではないだろうか」。

東京メトロは10月23日、東京証券取引所のプライム市場に上場した。売り出したのは国と東京都が保有していた2億9050万株。東京メトロの発行済み株式の半分にあたる。

初日の終値は売出価格の約1.45倍に

上場直後につけた初値は1630円となり、1株1200円とした売出価格を大きく上回った。終値は1739円で時価総額は1兆103億円に。今年最大の大型IPO(新規株式公開)となった。

東京メトロの株主は、53.4%を保有していた国と46.6%を持っていた東京都だった。今回それぞれが保有分の半数を売却した。国が売却で得た収入は、復興財源確保法に基づき東日本大震災の復興財源に充てられる。

東京メトロは形式としては民営会社だ。ただ当面は、国や都が株式の過半を持つ特殊法人としての経営が続く。

2015年の日本郵政以来となる政府保有株式の新規上場ということもあり、個人投資家の注目は高かった。「1日10回以上は問い合わせの電話がかかってきていた。電話を切っても、また何件もかかってくる。とくに株主優待に関する質問が多かった」。市川氏は上場直前の様子をそう語る。

このような周囲の興奮をよそに社内が盛り上がりに欠けているのはなぜか。その背景について、関係者の多くが指摘するのが次の2点だ。1つは「あまりに長期間にわたって上場計画が実現できなかった」こと。もう1つが「政争の具として翻弄されてきた」ことだ。

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