足りない賃料補助、飲食店を追い込む遅い政治 少なすぎる経済援助が現場を苦しめている

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2019年5月にサイトをオープンして以降、新規登録数(退去会員が多いが入居希望会員も含む)は月々30〜50件で推移してきたが、2020年3月は120件、4月は277件と急増した。大型連休明けの5月8日に与党の賃料支援策が示され、報道された後も増加傾向は変わらず、5月の新規登録数は15日時点で300件に達している。

退去NAVIを運営するアクトプロ広報室の上田直輝氏は「退去を検討する事業者の多くは飲食店。新型コロナの感染が広がる前は好調だった飲食店ですら一気に売上高が落ち込み、賃料を払いきれない状況に陥っている」と登録数急増の背景を分析する。

実際、退去NAVIの利用者からは「国の支援策には期待できないから退去をしたい」という声が寄せられているという。

2割の学生が退学を検討

賃料支援と並んで国会の重要課題になっているのが世帯収入の減少やアルバイトができなくなったことで困窮する学生の支援策だ。

学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」が4月9日から同月27日にネット上でアンケート調査を実施したところ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、親の収入が「減った」「なくなった」と答えた学生は約54%、アルバイト収入が「減った」「ゼロになった」は合わせて約70%に達した。退学についても「少し考える」「大いに考える」で約21%、すでに退学を決めた人も0.2%いた(回答したのは大学、短大、専門学校計319校の1200人)。

学生有志団体が独自調査を発表。苦境を訴えた(写真:高等教育無償化プロジェクトFREE)

同団体は4月22日に記者会見を開き、一律で授業料の半額免除やアルバイト収入が減った学生への休業補償、オンライン授業を行う大学・専門学校に対する設備費の補填などを求めた。

こうした動きを受け立憲民主、国民民主、社民、共産の4党は5月11日、議員立法「コロナ困窮学生支援法案」を国会に提出。大学や短大、専門学校の授業料を1年間は半額免除とし、免除分は国が補う。アルバイト収入が減った学生に対しては最大20万円(減収分が上限)を支給する2本柱だ。

野党の法案提出に与党もすかさず動いた。5月12日、自民党の学生支援プロジェクトチーム(PT)は、アルバイトがなくなり経済的に苦しむ学生に10万円、とくに困窮している学生には20万円を給付する提言書をまとめ、萩生田光一文部科学相に手渡した。

第2次補正予算の主要テーマは賃料支援策、学生支援策、雇用調整助成金の上限額引き上げ・改善策となる。

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