足りない賃料補助、飲食店を追い込む遅い政治 少なすぎる経済援助が現場を苦しめている

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自民党の賃料支援案は4月28日、岸田氏が予算委員会で説明した「岸田プラン」がベースになっている。自らが打ち出した「減収世帯に30万円給付」案が二階氏と公明党の反発であえなく「一律10万円給付」に修正されたことでメンツを潰された岸田氏にとって、賃料支援策は起死回生のチャンスなのだろう。

5月27日、政府は賃料支援策を固め、閣議決定した。支援対象となるのは2020年5月~12月いずれかの1ヶ月において売上高が前年同月比で50%以上減少した事業者、もしくは3ヶ月連続で同30%減少した事業者で、賃料の3分の2を半年分、国が補助する。ただし個人事業主は月額25万円、中小企業は同50万円、複数店舗を運営する企業は同100万円という上限がつく。

支払い猶予策を盛り込むべき

都心部を中心にハワイアンレストラン30店舗を営んでいるエッグスンシングス・ジャパン代表の松田公太氏(元参議院議員)は「家賃補助策ができたのは良いが、この補助額では小規模事業者は助かっても、都心部に複数店舗をもつ企業は諦めて廃業を考えるところが増えるのではないか。せめて、野党案に入っていた(賃料の)支払い猶予策とセットにしてほしい」と話す。

この状況下で中小企業を支え、労働者の雇用を守るためには政治の力が必要だ。足元では緊急事態宣言が解除され、経済活動に再開の兆しも見えている。だが、かつての日常が戻るわけではない。第二波の到来となれば、中小企業は一段と苦境に追い込まれる。この先の変化を受けて、確かな施策をスピィーディーに打つことができるのか。”遅い政治”は許されない。

週刊東洋経済5月30日号のスシャルリポート「『賃料補助』は焼け石に水、飲食店を追い込む”遅い政治”」に掲載した田村憲久・自民等政調会長代理のインタビューはこちら

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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