トランプはアメリカを滅ぼすからこそ「英雄」だ 臨界点に達する「追い詰められた白人」の絶望
自国の正当性を否定した「救世主」
ドナルド・トランプはどうして政治生命を保っているのか?
これは真面目な検討に値するテーマです。
粗野で攻撃的、ついでにしばしば差別的。
2016年の大統領選挙で、共和党候補となるべく動き始めたころから、トランプの主張にはこのような特徴が見られました。
普通なら、まともに相手にされないまま終わりそうなところ。
実際、予備選挙が始まった時点では泡沫扱いされていたのです。
けれども結果はご存じの通り。
トランプは候補指名を勝ち取ったばかりか、ヒラリー・クリントンを破ってホワイトハウス入りを果たします。
しかも、話はここで終わらない。
2020年の大統領選挙でジョー・バイデンに敗れた後、トランプは不正があったとして結果を受け入れず、権力の座にしがみつこうとしました。
2021年1月6日、支持者が連邦議会議事堂を襲撃した際も、暴力行為にこそ反対してみせたものの、「君たち(注:襲撃に加わった人々)はとても特別な存在だ。愛している」と呼びかけ、「この日は永遠に記憶されるべし!」と言い切ったのです。
大統領は合衆国の元首。
そして元首たるもの、自国の正当性を擁護する責務を負っている。
ところがトランプは退陣を迫られるや、アメリカの政治制度の正当性を否定、反乱をあおったと受け取られても仕方のない振る舞いを見せた。
いよいよ再起不能となって当たり前でしょう。
駄目押しというべきか、2024年5月には刑事裁判で有罪の評決まで受けました。
ところがどっこい。
トランプは消え去るどころか、2024年7月の共和党大会でも、大統領候補の指名を楽勝で獲得。
その直前、選挙集会において発生した暗殺未遂事件を、右耳の負傷だけで切り抜けたこともあって、今や支持者の間では「神の加護を受けた救世主」のごとく崇める風潮すら目立つと伝えられます。
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