トランプはアメリカを滅ぼすからこそ「英雄」だ 臨界点に達する「追い詰められた白人」の絶望

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なぜ、トランプはかくも支持されるのか?

この点を解明しようとするのが、会田弘継氏の新著『それでもなぜ、トランプは支持されるのか アメリカ地殻変動の思想史』です。

 

会田氏の議論は多岐にわたるものの、要点はいたって単純。

トランプはアメリカの正当性を否定する「にもかかわらず」支持されるのではなく、正当性を否定する「からこそ」支持されるのです!

見捨てられた人々の逆襲

どうして、そういうことが起きるのか。

この理由も明快です。

自国のあり方に絶望したあげく、正当性を見いだせなくなったアメリカ人が増えたため。

 

背景にあるのは、新自由主義型グローバリズムを長らく推し進めたことによる格差の恐るべき拡大です。

これにより自由民主主義の基盤となってきた中間層が崩壊、大勢の人々が貧困に追いやられました。

とくに追い詰められたのが、白人の労働者階級。

音楽評論家デイヴ・マーシュの表現にならえば、「際立った人種的特徴や文化的特徴を持たない、どこにでもいる無名のアメリカ人」です。

 

社会の主流派と見なされつつも、彼らはずっと、豊かで華やかな「アメリカ的生活」から締め出されてきました。

マーシュいわく、「ロマンティックに美化され、民主主義の屋台骨と讃えられるが、自己主張の機会などほとんど与えられたためしがない」。

裏を返せば、何かのきっかけで激しく爆発する可能性をはらんでいます。

すでに1970年代、これらの人々は「ミドル・アメリカン・ラディカルズ」(急進的な不満を抱えた中間層)と位置づけられていました。

 

それが困窮したうえ、格差の固定化が進んだせいで「いつかはこの状態を抜け出せる」という希望までなくしてしまう。

近年の白人労働者階級では、自殺や薬物中毒、過度の飲酒による肝疾患など、自暴自棄になったとしか思えない死に方をする者が増えており、「絶望死」という呼称まで生まれています。

しかるにトランプは2014年、こう語っているのですよ。

「アメリカの問題を解決する方法がわかるか? 経済が崩壊し、地獄さながらになって、すべてがメチャクチャになればいいんだ。そうすれば暴動が起きる。こうしてわれわれは、国が偉大だった頃の状態に戻るのさ」(英「インディペンデント」紙、2020年6月2日付配信記事)
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