経済対策は一刻の猶予も許されない状況だが、永田町ではこの世界特有の深謀遠慮が散見される。5月11日、自民党の岸田文雄政務調査会長は会見で、自身の傘下に5つのPTを稼働させる考えを表明した。「政調会長直属のPTを設置し、議論を集約していく」。
4月末に立ち上げた家賃対策PTに加え、雇用調整助成金の拡充に関するPT、中堅企業への資本注入策について検討するPT、マイナンバー活用に関するPT、学生支援策の取りまとめをするPTだ。
5つものPTを設置する理由を岸田氏は「急を要する課題や省庁をまたぐ課題に対応するため」としているが、背景には、3月に国会内に設置された政府・与野党連絡協議会に対する微妙な距離感があるとされる。
同協議会ができたきっかけは、2月末に要請された学校の一斉休校だった。自民党側は事前に知らされておらず、政権の危機管理を担う菅義偉官房長官や杉田和博官房副長官、ひいては所管大臣である萩生田文科相すら詳細を把握していなかったことが、永田町で問題視された。
連絡協議会に”乗らなかった”岸田氏
緊急事態下において政府と与野党が連絡を密にし、必要な施策をスピーディーに打っていくことを目的に自民党の二階俊博幹事長が設置したのが政府・与野党連絡協議会だ。国会に法案が提出されれば与野党間で丁々発止の議論になる。法案提出前に政府・与野党で論点を調整し、すり合わせることができれば国会審議は円滑化し、全会一致になりやすい。そんな二階氏の狙いに野党も乗り、コロナ禍が収束するまでは与党に最大限協力していく意向を示した。
しかし、これに岸田氏は乗らなかった。各党、同協議会には政調会長など政策責任者が出席する中、自民党だけは新型コロナウイルス関連肺炎対策本部長である田村憲久政調会長代理が出席している。これは、政策作りを主導するのはあくまでも自民党政調であるという岸田氏の意思の表れだ。