ドイツで産業空洞化が進むシナリオが現実味を強めている。ドイツの商工会議所連合会(DIHK)が8月1日に公表したアンケート調査(対象はドイツ国内の約3300社)によると、ドイツ企業の37%が国内生産の縮小や生産拠点の国外移転を検討していると回答した。2022年には16%、2023年には31%だったため、こうした動きは着実にドイツで拡がっているようだ。
エネルギー高がドイツ企業を揺さぶる
理由は実に明快であり、エネルギーコストが下がらないことにある。ドイツの生産者物価ベースのエネルギー価格は、2019年を100とする指数で見ると、2024年6月時点で177.8と、依然としてコロナショック前の2倍近い高水準だ。1月時点では181.2だったため、エネルギー価格は高止まりしている。
このうち、天然ガス価格は230.9と、ロシア・ウクライナ戦争に端を発したエネルギーショック後の最悪期である2022年10月の674.4からはかなり安定したが、それでも依然としてコロナショック前の2倍以上の高水準だ。一方で電力価格も高水準であり、生産ベースだと176.6と最悪期である2022年9月(308.9)より低下したが、やはりコロナショック前の2倍近い水準である。
エネルギーコストの高止まりをもたらしているのは、ドイツ政府のエネルギー政策の失敗にほかならない。脱原発と脱炭素、脱ロシアの三兎を追うドイツのオラフ・ショルツ政権は、2023年4月に脱原発を果たし、2024年3月と4月に計15基の石炭火力発電所を閉鎖した。その一方でショルツ政権は、ガス火力と再エネの拡大に邁進してきた。
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