貿易決済が混迷!「暗号資産」に手を出すプーチン 輸入が停滞するロシアの弥縫策に勝算はあるか

✎ 1〜 ✎ 31 ✎ 32 ✎ 33 ✎ 34
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

貿易決済の停滞に業を煮やしたプーチン・ロシア大統領は暗号資産の活用を本格化させる(写真:Bloomberg)

ロシア政府は9月1日から、中央銀行の許可の下で、特定の企業によるデジタル通貨での貿易決済や為替取引を正式に容認する。それと同時に、個人間での暗号資産の取引に対しては厳しい制約を課す。つまりロシアは、暗号資産に対するコントロールを強め、それを大口の貿易決済に限定して利用するように規制を強化するわけだ。

貿易決済の停滞で暗号資産に目をつける

こうした措置をとる最大の理由は、貿易決済の停滞にある。現在、ロシアと中国など貿易相手国との間の決済には大幅な遅れが生じている。昨年12月にアメリカが2次制裁を強化したことを受けて、貿易相手国の金融機関がその対象に認定されないよう、ロシアとの取引を回避しているためだ。そこでロシアは、暗号資産に目をつけた。

統計上でもロシアの貿易は停滞しており、最新4〜6月期の輸出は前年比1.3%増と小幅なプラスにとどまるとともに、輸入は前年比8.2%減と、3四半期連続で前年割れとなっている。高い伸びだった前年の反動というベース効果以上に、決済の遅れが貿易、特に輸入の停滞につながっていることは、ロシア自身が認めるところである。

すでにロシアは、暗号資産の中でもアメリカドルと為替レートを固定したステーブルコインである「テザー」を用いて、中国などと貿易決済を行っているようだ。ステーブルコインであれば、為替変動リスクが極めて限定されるため、ビットコインのようなボラティリティ(変動)の大きい通常の暗号資産を用いるよりも、安定した取引が可能になる。

一方でロシアは、暗号資産が組織犯罪や資本逃避に使われることを防ぐ必要がある。暗号資産はそもそもボーダレスな送金ツールとして開発された経緯があり、実際にロシアからも巨額の資金が暗号資産を通じて第三国に流出した形跡がある。これを防ぐために、ロシアは、暗号資産の利用を大口の貿易決済に限定しようと試みているようだ。

次ページマイニングの管理にも着手
関連記事
トピックボードAD