ドイツ「VW工場閉鎖」は日本の産業空洞化と大違い ユーロ高でも割安、コスト高招いたエネルギー政策

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通貨高で工場が海外へーー。ともに製造業大国ゆえに日本の経験をつい重ね合わせがちだが、事情は異なる。

ドイツ国内の工場を閉鎖すれば1937年の創業以来初のこと(写真:Bloomberg)

9月2日、ドイツ最大手の自動車企業であるフォルクスワーゲン(VW)社がドイツ国内の工場閉鎖を検討しているとのニュースが大々的に報じられた。

背景にある要因は1つではないものの、主因はほぼ間違いなくエネルギーコストの高騰であり、これは理想に浮かれて脱原発に踏み切り、再生エネルギーなど高価かつ供給が不安定な電源構成に軸足を移したエネルギー政策の帰結と断じて差し支えない。

ドイツ国内のエネルギーコストは電気代もガス代も鋭角的に増加している。最近、ようやくピークアウトの兆しも見られるが、パンデミック前の水準と比べれば2023年末時点でガス代は約2.2倍、電気代は約1.3倍に膨らんだままだ。

対露関係の悪化による天然ガス調達の途絶はある程度不可抗力だとしても、その苦境を横目にわざわざ理想のために原発稼働を断ち切ったという政治判断をドイツの企業部門が受け入れるのは難しい。

2社に1社が減産・移転を計画

実際、ドイツ商工会議所(DIHK)の調査などを見ても、エネルギー価格高騰がドイツ脱出の引き金を引いている様子が透ける。

ドイツ商工会議所が2024年8月1日に公表した約3300社の加盟企業に対する調査がドイツ企業の苦境を明示している。調査によると、減産もしくは海外への移転を検討している国内企業の割合が37%と、2022年の21%、2023年の32%から増勢傾向にあることが確認されている。

この傾向は特にエネルギーコストが高い企業(エネルギーコストが収入の14%以上に相当する企業)や大企業(従業員500名以上)に顕著であることも指摘されており、これらの企業に関してはおおむね2社に1社が減産や移転を検討しているという結果である。

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