接戦と予想されたアメリカの大統領選挙は、あっさりトランプ氏が圧勝した。来年1月からは「トランプ2」が始まることになる。アメリカ国民はむろん、日本を含めた世界全体の秩序が大きな変化をとげる4年になる可能性が高い。これまでのトランプ氏の言動を振り返ると、世界を分断する人物がまた帰ってきたと言っていい。
実際に、就任前から閣僚人事や公約した政策の実現に取り組んでいると報道されており、パリ協定再離脱、ウクライナ戦争終結に向けて動き出しているとされる。8年前同様に、閣僚人事ではウォール街出身のメンバーが―数多く配置されるだろうと予想されている。
トランプ氏は、今回の選挙戦で負ければ収監される可能性があるとされ、必死に国民の欲求に応えたポピュリズム(大衆迎合主義)政権のシナリオを描き続けてきた。そのためにアメリカ・ファーストを貫かざるを得ず、世界の秩序は大きな変化を遂げる可能性が出てきた。トランプ2がもたらすさまざまな変化について、簡単にまとめてみたい。
トランプ2、最大の焦点は「関税」?
今回の選挙で、再三トランプ氏が主張したものの1つに「関税」がある。議会の承認を必要としない関税率の変更は、トランプ政権にとって主要な武器になるからだ。具体的には次のようになっている。
●中国…… 60%
●その他の国…… 10~20%
●メキシコの自動車産業……200%以上
トランプ氏がこのまま関税をかけてくるかどうかは不透明であり、1期目でも中国に対して、関税をかけられたのは就任してから11カ月後になった。モルガン・スタンレーは、中国への60%と他国の10%の関税が課されれば、アメリカの消費者物価指数は「0.9%上昇」すると予想している。また、ドイツ銀行はアメリカの成長率がマイナスになると予測している。(ウォールストリート・ジャーナル「トランプ氏勝利は米経済に何をもたらすのか」2024年11月7日)
実際、インフレの収束を公約に掲げているトランプ氏にとっては、そう簡単に関税を上げるわけにもいかない。関税が大幅にアップされれば、輸入品は高くなるため、インフレ→金利上昇→ドル高に振れることになり、その効果は薄らぐことになるはずだ。
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