トヨタが株主総会で見せた「一強」へのこだわり リーマンショック後に進めてきた体質強化を強調

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株主の質問は「他社の多くが今期の業績予想を出さない中、トヨタは業績予想出した。営業利益5000億円という数値は当てになるのか」というものだった。

これに対し、豊田社長は「今回出した数字はあくまでも一つの基準。これを計画としてやるのではなく、最低限守らないといけない基準であるということを社内には伝えている」と答えた。

拡大路線が裏目に出た日産自動車は2020年3月期に6712億円の巨額最終赤字に転落。再建に向けた大規模リストラに追われており、とても業績予想を出せる状態ではない。ホンダは新型コロナウイルスの影響から「合理的に算定することが困難」として業績予想の開示を見送った。八郷隆弘社長は「チームホンダ一丸となって必ずこの難局を乗り越える」と言うのが精一杯だった。

結局、日本の乗用車メーカーで2021年3月期の業績予想を出したのはトヨタだけ。経済活動が再開したものの、今後のコロナ影響は不透明なままだ。そうした中、黒字確保を「最低限守らないといけない基準」と総会で言うのはかなりの覚悟が必要だろう。

「取引会社が不満を持っていないか」

それでも、別の株主からはこんな質問が出た。

「仕入先や販売店はそこまで利益を伸ばせていない。『トヨタ一人勝ち』の状態に対して各社が不満を持っていないか。トヨタとしての考え方を教えてほしい」。

5月12日の決算会見では減益とはなるものの、黒字の見通しを公表した豊田社長(写真:トヨタ自動車)

豊田社長はまず「仕入先の皆さん販売先の皆さんとは一緒に頑張っているのでご安心いただきたい」と答え、調達担当の白柳正義執行役員がコロナ禍における仕入れ先へのさまざまな支援策を説明した。

400社を超える1次下請けに加え、1万社以上ある2次下請けに対しては「(1次下請けを通じて)困りごとの把握に努め、資金繰りや生産性改善などの支援を行っている」(白柳執行役員)とした。

自動車は3万点を超える部品で成り立っており、その75%は部品メーカーから調達する。1次下請けは比較的経営体力があるが、2次下請け以下ともなると、財務面で余裕がない企業も多い。部品メーカーの支援をおろそかにすると、調達に支障をきたし、ひいてはトヨタの生産が滞りかねない。

トヨタ自身、リーマンショックの時には金融環境の激変から資金繰りに苦労したが、足元の総資金量(金融事業を除いた、現金及び現金同等物など)は8.6兆円と当時の2倍を超え、財務基盤は堅牢だ。一方、売り上げ減少から中小の部品メーカーは運転資金の確保が課題になる。

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