新型コロナ初の「労災認定」決定のポイント 医療従事者以外にも対象となるケースもある

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しかし、こうした判断に際して、新型コロナウイルスについては症状が出なくとも感染を拡大させるリスクがあるという特性があるため、それに応じた適切な対応が必要となります。そこで、調査により感染経路が特定されない場合であっても、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とすることが厚生労働省より示されました(基補発0428第1号)。

6月10日時点において、新型コロナに関する労災請求件数は、医療従事者で152件、うち13件が決定しています。医療従事者以外では、35件(うち海外出張者6)の請求のうち、4件(うち海外出張者1)が決定しています。

医療従事者以外も労災対象になるケースとは

医療従事者などについては、患者の診療もしくは看護の業務または介護の業務などに従事する医師、看護師、介護従事者などが新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象になります。

一方、医療従事者など以外の労働者の場合はどうでしょうか? 感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象になります。

しかし、問題となるのは、感染経路が特定できないケースです。新型コロナウイルスは目に見えず、無症状のケースもある手ごわさがあります。そこで、調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下で働いていた労働者が感染した場合、個々の事案に即して判断する見解が示されました。

1)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況等を調査したうえで、医学専門家の意見も踏まえて、業務に起因したものと認められるかどうかを判断することとなります。

人との接触機会が多い環境下で働く人は、緊急事態宣言が全面解除された今後において、さらに増えていくことは間違いありません。夏場になると暑さでマスクを外すこともあるでしょうし、クーラーの利いた部屋で換気が十分に行き届かないなど、職場環境においてもさまざまな注意点が出てきます。

さらに冬場になれば、乾燥でウイルスが蔓延しやすい状況になります。医療従事者ばかりでなく、感染リスクを完全に遮断するのは、なかなか難しいといえるでしょう。

なお、厚生労働省は、熱中症予防として、屋外で人と十分な距離(少なくとも2メートル以上)が確保できる場合は、マスクを外すように呼びかけています。

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