アメリカの株式市場は再び暴落する懸念がある 5月雇用統計「超サプライズ」に潜む数字の罠

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もっともPPPは、未来永劫に補助してくれるわけではない。融資額は給与の2-3か月分であり、新型コロナの影響がそれ以上に長引くなら、ビジネスが落ち込んだままの企業は給与の支払いが難しくなってくる。

その点で見れば、ようやくロックダウンが緩和され、ビジネス再開の機運が高まっていた矢先、ミネアポリスで白人警察官による黒人男性への暴行致死事件が発生、全米で抗議行動が激化していることの影響はあまりにも大き過ぎる。

抗議行動の拡大、長期化でもしビジネスの再開が遅れるなら、PPPによってかろうじて維持される格好の雇用も、結局は失われてしまう。今回の強気サプライズの反動もあり、6月分か7月分の雇用統計で非農業部門雇用者数が再び大幅に落ち込む可能性は、かなり高いと見ておくべきだ。

景気が再び落ち込む可能性はむしろ高まった

また今回の雇用の大幅増によって、「米景気の落ち込みは思ったほどに深刻ではないのでは」という楽観的な見方が広がり、政府や議会が進めている追加の経済支援策の成立が難しくなるシナリオにも注意が必要だ。

米下院は5月15日、民主党を中心とした賛成多数で3兆ドルに上る規模の経済対策第4弾、「HEROES法」を承認した。

一方で、共和党が多数を占める上院やトランプ政権は企業減税などを中心とした独自の救済案を検討しており、これがそのまま成立する可能性は元々低かった。だが、5月雇用統計を受けて、さらに可能性は低下したと考えておくべきだろう。

新型コロナウイルスへの対応やさまざまな失言で支持率が伸び悩んでいるドナルド・トランプ大統領は、早速、今回の雇用の大幅増を「政府による取り組みの結果が出た!」と大々的に喧伝している。

だが、このような形で国民の間に楽観論を拡散させるのは非常に危険な行為と言わざるを得ない。確かに雇用が大幅に回復したのはPPPなどの政府の政策によるものではあるが、それらはあくまでも一時的な効果に過ぎない。

足元で起こっているロックダウンや黒人差別に対する抗議行動拡大の影響を過小評価し、この先然るべき経済対策を打ち出せなくなるのならどうなるのか。秋以降に新型コロナ感染拡大の第2波がやってくるリスクも含め、景気が2番底に向かう可能性は、むしろ高まったと考えておくべきだ。その場合、再び株式市場が暴落に見舞われる可能性は否定できない。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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