原油価格が再び「急落する懸念」はないのか

産油国が供給を絞っても価格急回復はムリ?

「原油価格は新型コロナも収束しそうだし、アメリカの経済も上向くのでもう下がりにくくなった」と考えるのは早計だ。今後の需給の波乱要因は何か(写真:ロイター/アフロ)

少し前のことになるが、5月のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されているWTI原油先物6月限(ぎり)は、大きな波乱もなく最終取引日(納会)を迎えた(5月19日)。

ここから約1カ月前の5月限納会の前日(4月20日)には「1バレル=マイナス40.32ドル」という、信じられない安値を付けたのは記憶に新しい。これは在庫が急速に積み上がり「貯蔵施設の能力が限界に達する」との懸念が高まった結果の異常事態だったが、市場では「6月限納会の前にも同様のパターンでパニック的な売りが出てくる可能性がある」との不安がギリギリまで残っていた。だが、結局、6月限の最終価格は1バレル=32.50ドルと、小幅ながらも7月限の終値を上回る「逆ザヤ」をつけるに至った。

生産大幅減少、ロックダウン緩和で需要増は明るい材料

期近限月(納会日までの期間が一番短い先物取引)の価格が、期先限月(納会まで期間が長い)を下回るという、「コンタンゴ」(順ザヤ)という状態は、足元に供給が潤沢にあり、価格の下押し圧力が強い時に表れるとされている。

それまで10ドルを超えるような価格差が当たり前のように見られるなど、「スーパーコンタンゴ」状態が定常化していたのが一気に解消されたのは、正直言って驚きを禁じ得ない。7月限価格も一時期よりは上昇、35ドル台と下げ止まったようにも見える。果たして、このまま足元の過剰在庫や貯蔵施設の容量不足の問題が解決に向かい、価格もさらに上昇基調を強めてくるのだろうか。

4月までの過剰な在庫の積み増しやそれに伴う価格急落は、米シェールオイル生産の増加や、サウジアラビアをはじめとしたOPECプラスが3月5-6日に開かれた会合で、減産によって価格を維持する方針を転換したことが大きかった。世界市場におけるシェア拡大を目的に増産に転じるといった供給面の弱気要因に、新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴う景気の大幅な落ち込みによる需要の減少が加わった。これで需給が一気に緩んでしまったことが背景にあったのは間違いない。

このうち供給面の問題に関しては、OPECプラスが4月9日からの会合で大幅な追加減産で再度合意した。また価格低迷を受けて米シェールオイルやカナダの生産も大幅に減少したことで、供給過剰は次第に解消方向に向かっている。一方の需要も欧米でロックダウンを緩和する動きが出てくるようになり、経済活動再開に伴って徐々に回復に向かうとの期待が高まっているというのが今の状況だ。

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