アメリカ株への楽観論はこれから崩れていく 市場は雇用の歴史的な悪化を無視している
少し前のことになるが、5月8日に発表された4月の米雇用統計は、非農業部門の雇用数(Nonfarm Payroll)が前月比で2050万人も減少。一方、失業率は14.8%に上昇と、2つとも記録的な弱気の内容となった。
過去最大の雇用減、厳しいサービス業
非農業雇用数は1939年に集計が始まって以降、最大の落ち込みとなった。それまでの記録が1945年9月の195万9000人の減少だったのに比べ、まさに「ケタ違い」の雇用が一気に失われたことになる。また失業率も、1948年の集計開始以降での最高を記録した(なお、米労働省は12日にデータの一部を修正。4月の非農業雇用数を2053万7000人、3月を87万人から88万1000人へと、それぞれ減少幅を引き上げている)。
雇用数の減少の詳細を百分比で詳しく見てみよう。全体で13.5%の減少となる中で、製造業が11.1%にとどまったのに対し、民間のサービス業は16%の減少と、やはりサービス業への打撃が大きかったことが分かる。
人材派遣などの一時雇用が29.2%の減少となったほか、「レジャー・ホスピタリティー」分野はなんと46.8%の減少。中でも遊戯施設やギャンブルは59.7%、芸術やエンターテイメントでも54.1%と、大きな落ち込みとなった。このほか、レストランやバーの雇用が46.2%、ホテルなども45.5%の大幅減となっている。ほかでは、歯科オフィスの52.5%やランドリーサービスの52.7%なども目を引いた。いずれも新型コロナウイルスに感染するリスクが高い職種であり、今回の感染拡大の影響が大きく表れた。
一方で失業率の14.8%は、市場予想を下回った。これは失業率の「母数」となる労働力人口が643万2000人も減少(過去最大の落ち込み幅)となったのが大きい(前月は163万3000人減)。労働力人口は現在就労中の人や就職活動を行っている失業者などで、専業主婦や学生、失業中でも現在就職活動を行っていない人は含まれない。これらは自己申告制であり、今回は雇用環境の大幅な悪化を受けて、職探し自体をあきらめた人が急増したために労働力人口が減少、その分だけ失業率が押し下げられたのだろう。
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