アメリカ株への楽観論はこれから崩れていく 市場は雇用の歴史的な悪化を無視している

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もっとも市場はこうした歴史的な雇用の悪化をものともせずに買いが集まり、8日のNYダウ工業平均株価は1.9%の上昇となった。歴史的な雇用の悪化も想定範囲内であったことに加え、新型コロナウィルスの感染拡大ペースが鈍る中でロックダウン(都市封鎖)を緩和させる動きが出てきたことで「年後半には景気が回復してくる」との期待が高まったことがその背景にあるのだろう。

先週(11-15日)の株式市場でも、一時売りが先行する展開が多く見られたが、これは米中の緊張の高まりという新たな懸念が浮上したことによる部分が大きく、雇用の悪化や将来的な景気の落ち込みが改めて材料視された訳ではないと思われる。

果たして市場はこうした雇用の悪化を、実際にどの程度まで織り込んだのであろうか。新規失業保険申請件数(毎週木曜に発表され、雇用の先行指標とされる)を見る限り、楽観的な見方をするのは時期尚早と考えた方がよさそうだ。

衰えない雇用減少のペースが消費者心理をさらに冷やす

5月14日に発表された9日までの週の新規の失業保険申請件数は298万1000件と、市場予想を上回る弱気の内容となった。3月28日までの週に686万7000件という記録的な数字となって以降、申請件数は徐々に減少はしているが、それでも以前とはケタが一つ違う大幅な申請が続いていることに変わりはない。

すでにロックダウンの影響が出始めた3月21日までの週からの累計では、3600万件を超える申請が行われているし、1週遅れで発表され、職に復帰した人や受給を却下された人を除く継続的な受給件数も7週間で1977万件増加、週平均で282.5万件という大幅な増加となっている。

こうした数字を見る限り、6月5日に発表される5月の雇用統計でも1000万人を超える大幅な非農協雇用数の減少が確認されるのは避けられないだろう。何より問題なのは、こうした雇用減少のペースが、未だにほとんど衰えを見せていないという点だ。

前回のコラム「今年もやっぱり『Sell in May』かもしれない」では、「今回の危機はリーマンショックのような金融の問題ではなく、新型コロナウイルスの感染拡大とロックダウンによって移動を制限され、働く場所を失ってしまった人の問題であるだけに根が深い」との警告を発した。

金融面の問題ならば、とにかく資金を供給すればかなりの部分が解決するし、リーマンショックの際も実際にそうして危機は比較的早期に解決された。だが今回の問題は、いくらFRB(米連邦準備制度理事会)が過去に前例のない金融緩和策を打ち出し、政府や議会が大型の財政支援策を打ち出しても、それだけでは解決されるものではない。

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