もしもPE/VCの世界で本当に成功したいのであれば、投資アイデアをどんどん出せるセンスが必要ですが、それ以前のPE/VCのジュニア(20代くらい)に必要なスキルについて記載いたします。
基本的に投資対象会社の財務モデルが作れてバリュエーションができることが必要になります。モデルは四則計算ができて、ロジックさえ頭に入っていてエクセルが使えれば誰でも作れます。しかしながらアサンプション(モデルの前提条件)に作成者のビジネスセンスが出ます。対象事業の環境や事業構造を理解していないと、リアルな前提をおいたモデルは作れないからです。どんな数字でも横引きはダメ、ゼッタイです。
質問者の方は簿記1級レベルの会計の知識があるとのこと、すばらしいです、あとはモデルを速く正確にセンスよく作れるようにしましょう。ジュニアのスーパーモデラーはレバレッジドファイナンスを行うPEがデットプロバイダー(銀行)を呼ぶ際に必要とされます。
VCはキャラが大事、PEはチームプレー
一方でVCは足で稼ぐ投資先発掘営業ができるかどうかが決め手です。誰にでもアポ取りできるようにしましょう。もちろん起業家の出してきた事業計画をたたくためにモデリングやバリュエーションはできるべきですが、先述の本質的なVC投資とDCFの相性の悪さが存在し、どうしてもざっくりになります。もちろんモンテカルロシミュレーションをやってもいいのですが、実務的にVCのキャピタリストがやっているのを筆者は一度も見たことがありません。関心のある方は“Schwartz-Moon model”の論文をご参照ください。
また、VCのほうが小さなベンチャー企業を相手にしているので、起業家を引っ張り上げるリーダーシップなど、キャピタリスト個人のキャラや能力が重要であり、PEのほうがチームプレーです。いずれにせよ、人間のわびさびが理解できることは極めて重要です。「人柄を見て投資してよ」という人柄の悪い経営者にも会わないといけないからです。
筆者はあるPEのパートナー(共同経営者)が投資候補の企業の社長と会った際に、「次の会議があるので」とパートナーが早めに退出したためにディールが破談になったのを見たことがあります。企業の社長からすれば、「人の会社を買いに来て、オレの話より重要なことがあるのかよ」というところでしょう。
日本においては安定的なキャッシュフローの出ている、株主の少ない企業(多くはオーナー系)はPEの大好物なので、「企業オーナーのネットワークと気に入られる愛嬌」があれば、どこのPEでも採用してくれることでしょう。日本に地盤のない外資系PEなどは数億円の報酬を用意してグレイヘアと呼ばれる案件ソーシング担当者(多くは金融機関大物OB)を雇ったりしていたものです。
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