と言うと話が終わってしまうので、少しご説明いたします。筆者は自己投資業務もM&Aアドバイザリー・PE/VC投資業務も行っており、過去にはマーケットの経験もあるので、何らか役立つことをお伝えできるかもしれません。その昔、ペンネームで書いた『東京ディール協奏曲』というPEが出てくる恋愛小説をお読みいただくといいのですが、レアものなので現在は手に入りにくく、ここでご説明することにします。
多くの商売に共通することですが、投資ファンドの目的は何でしょうか? そうです、人様から預かったおカネを増やすことです。これは皆さんの勤務する株式会社でも同様です。株主から預かった大切なおカネを運用する箱が株式会社です。「投資ファンド」というとマネーゲームでハゲタカだかハゲワシだか、なんだかイメージが悪いですが、利益を上げることにより託されたおカネを増やすという意味では、株式会社もファンドも変わりがありません。そこらへんのハゲタカは、皆さんの大切な年金を運用しているかもしれません。株式会社もファンドもただの仕組みと箱です。
学歴や数学より必要なもの
おカネを増やすことに必要なのは何でしょうか? 学歴でしょうか? 数学の点数でしょうか? 数学や物理学の博士しか採用しない(MBA不可の)数理系ヘッジファンドに入れるような頭脳や、プロのポーカープレーヤーになれるような数的センスがあれば別ですが、おカネを増やすことに必要なのはビジネスのセンスです。
そして企業投資というものは、①これから成長する市場か、②競合を倒してシェアを奪えるような市場を見つけ出して、そこで成長できる能力を持った会社に最適なストラクチャー(株式や負債等)で投資し、リターンを上げる行為です。企業に資金を提供する行為、すなわちファイナンスは投資対象の特性を考慮し、投資家の望むアセットクラスのリスク・リターンを設計する行為だと言えます。
多くの場合、「投資」のリターンは情報の非対称性から生まれます。誰かが先述のような投資機会に気づき、何らかの形で投資ができれば、将来はリターンを上げることができますが、情報の非対称性が時間と共に消失したときにはリターンを上げる機会も減少します。市場はもちろん効率的ではありませんが、市場参加者の情報量が等しくなっていけば効率的になっていくため、誰かひとりだけリターンを上げることは難しくなってきます。これはHFTのような株式市場における超短期売買においても言えることですし、PE/VCにおいても、誰も気づかない投資機会は割安で投資できますが、みんなが気づくと割高になります。
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