マセラティは、この秋にまったく新しいアーキテクチャーのハイパフォーマンスモデル「MC20」のローンチを予定している。
ダラーラ製CFRPセンターモノコックを採用し、600PSを発生する3リッターV6ツインターボエンジンをミッドマウントするという。
近年、マセラティのラインナップにはミッドマウントエンジンモデルは欠落していたから、マセラティスタにとっては大きなサプライズだ。
私はこの2月、マセラティ本社にてミーティングを行った際、開発部門にそのプロトタイプが3台ほど存在することを確認している。
このプロトタイプはウィンドシールドやドアなど、ボディの多くがアルファロメオ「4C」のコンポーネンツで偽装してあるから、その姿から完成モデルを想像することは無意味だ。
しかし、つい先頃までマセラティの本拠であるモデナのチーロ・メノッティ工場では、アルファロメオ「4C」のアッセンブルを行っていたから、MC20の開発と製造において、4Cのノウハウが大いに活用されることは間違いない。ちなみに、ティーザーとして発表されたMC20のオフィシャル写真は、あくまでもエンジニアリングテスト用のものである。
ボーラにメラク、ブーメラン、バルケッタ
ここで、マセラティのプロダクションモデルにおけるミッドマウントエンジンモデルの歴史を振り返ってみよう。
フェラーリ傘下時代の2004年に、「エンツォ・フェラーリ」のコンペティションバージョンともいうべき「MC12」をダラーラ、イタルデザイン・ジウジアーロとのコラボレーションで開発し、限られた数量を販売した。
しかし、最もよく知られたマセラティの量産ミッドマウントエンジンモデルといえば、シトロエン傘下時代の「ボーラ」と「メラク」だろう。1971年にV8エンジンを縦置きに搭載したボーラ、そして翌1972年にシトロエン「SM」の北米仕様向けV6エンジンを搭載したメラクが発表され、ラインナップに載った。
コンセプトモデルにはなるが、1971年にボーラをベースとした「ブーメラン」も発表され、それらは“スーパーカーブーム”の立役者にもなった。
デ・トマソのマネージメント時代に発表された、コンセプトモデルではあるが、「チュバスコ」、そしてチュバスコのアーキテクチャーを利用して作られたワンメイクレース用モデルの「バルケッタ」も忘れてはいけない。
今回は、1台の試作車(不動のモックアップ)が製作されただけで消えてしまった、幻のチュバスコに焦点を当ててみよう。
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