「再び婚活市場に戻る人たち」それぞれの事情 婚約したのになぜ結婚をやめてしまうのか

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それがだんだん窮屈になっていった。そして、決定的だったのは、洋子の友達が、『結婚のお祝い会をしてくれると言うから、行こう』と誘ったときのことだった。

「それって、僕らにごちそうしてくれるの? それなら行ってもいいけど、割り勘でお金を払わなきゃいけないなら、もったいないから僕は行かないよ。1人で行っておいでよ」

洋子は、私に言った。

「その発言を聞いて、なんでもお金の損得を考えて暮らしている人なんだなと思ったんです。人のためにお金が使えない。人にごちそうしたり、プレゼントをあげたりすることで、人が喜んでくれる。そういうことをしない人なんだなって。そんな人と結婚したら、お金は貯まっていくかもしれないけれど、心が貧しくなる。楽しい生活が送れないと思ったんです」

金銭感覚は、その人の気質と育った環境で培われる。その感覚が両者あまりにも違いすぎると、結婚生活はうまくいかない。

「そういうことはしたくないし、性欲もない」

もう1つの壊れてしまう原因は、夫婦のセックスの問題だ。

成婚退会をするまで、伊藤真由美(仮名、40歳)は、河本晶司(仮名、47歳)と、手をつないだことはあったものの、男女の関係にはなっていなかった。真由美はそれまで男性経験がなかったし、結婚相談所の規約に“男女の関係になったら、成婚と見なす”とあったので、晶司がそれを忠実に守っているのだと思っていた。

成婚退会をして、初めて2人で2泊3日の温泉旅行に出かけた。真由美は初めての夜に期待と不安が入り混じっていたが、とにかく彼に身を委ねようと思っていた。温泉地を観光し、夕食を済ませて、旅館へチェックイン。お風呂から出てくると、2つの布団が並べて敷かれていた。冷蔵庫のビールを2人で飲み、ほろ酔い気分になると、晶司が言った。

「もう寝ようか」

いよいよか! 

真由美は緊張で体をこわばらせたが、晶司は、さっさと1人で布団に入ると、間もなく寝息を立てて寝てしまった。肩透かしをくらったような気持ちになったが、朝も早かったし、今日は疲れているのだろう。さすがに一緒の布団に入っていく勇気はなかったので、真由美は隣の布団に入って眠った。

次ページところが、2日目の夜も
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