母の日に選ばれる絵本が描く「親の切なる願い」 母は相反する感情を胸いっぱいに持ちこたえる
けれど、ここでもうひとつ、私が付け加えたいことがあります。
それは、アリスンの「母性」が、どのようなものかということ。
アリスンは3人の子の母であると書きました。
上のふたりは、いわゆる「お腹をいためて産んだ」実子ですが、じつは3人目は、生後間もないときに迎えた養子です。
そして、この絵本のテキストとなった詩は、その子の寝顔をみているときにうまれたものなのです。アリスンと末娘の母子としての絆は、今もとても強いものです。
「血のつながらない子を、ほんとうに愛せるの?」という質問をうけると、アリスンは、こう答えるそうです。
「親友、恋人、パートナーなど、あなたが心から愛している人の名前をたくさん並べたリストをつくってみて。次は、そのなかで血がつながっている人をチェックしてちょうだい。それが答えよ」と。
「母」とは子を産んだか否かで線引きされない
どうやらアリスンにとって「母」とは、じっさいに子どもを産んだか否かで線引きされるものではないらしい。
幼くあどけない者を守り、育み、たとえその子の個性がじぶんの価値観から少々はみだそうともできる限り応援して、広い世界へと送りだす存在。
あえて定義づけるならば、そんなもののような気がします。
今から1年前に、アリスンは来日し、講演やインタビューをこなしました。
おかげで私も彼女とじっくり話をすることができ、この絵本の味わいを深いものにしているのは、かならずしも血縁にとらわれない懐の広い母性だと思うようになりました。
いえ、もしかしたら、母性(motherhood)や父性(fatherhood)という性差をもこえて、より広く社会的なparenthood(保護者であること)と呼ぶべきかもしれません。