母の日に選ばれる絵本が描く「親の切なる願い」 母は相反する感情を胸いっぱいに持ちこたえる

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(出所)『ちいさなあなたへ』(主婦の友社、以下同)
発売から12年。世界21言語に翻訳され、日本国内だけでも累計65万部。異例のロングセラーとして売れ続けている『ちいさなあなたへ』という絵本がある。この絵本の少し変わった特徴は、1年のうち母の日に最も多く売れることだ。絵本をプレゼントすることが、母へ「ありがとう」以上のものを伝える。
世界的なパンデミックの渦中にある今、この絵本が伝えるメッセージについて、翻訳者のなかがわちひろさんが語る。

あのひ、わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ、
 その いっぽん いっぽんに キスを した。 

(外部配信先では本書の抜き出し部分を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

若い母親と小さなあかちゃんの出会いからはじまるこの絵本の原書に、私は翻訳者として出会いました。いまから13年前のことです。

「わたしのあかちゃん」は、やがて「わたしのこども」になり、母親は寝顔をみつめて、その子の未来を夢みます。

すやすやと ゆめを みている あなたを みながら、
 わたしも ときどき ゆめを みる……

いつか きっと、あなたも とびこむのだろう

そして、次の場面で、私はおもわず息をのみました。

思春期のきらめきと鋭敏な感覚を、こんなふうに瑞々しく表現するなんて……と。

いつか きっと、あなたも とびこむのだろう。
 ひんやり すきとおった みずうみの みずの なかへ。

どのページにも、子の成長を見守る母の気持ちが淡々とつづられています。やさしい言葉でありながら、その純度は高く、まさに詩でした。

詩の翻訳はとても難しいので、すこしでも良い翻訳をするために、私は著者のアリスン・マギーとメールのやりとりをはじめました。

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