母の日に選ばれる絵本が描く「親の切なる願い」 母は相反する感情を胸いっぱいに持ちこたえる

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「わたしのこども」から「わたし(たち)の子ども(たち)」へ。

そんなふうに広げられるのは、とても人間的で素敵なことです。

『ちいさなあなたへ』(主婦の友社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

この滋味が奥底に流れていればこそ、多くの老若男女の琴線にふれるのかもしれないと思うと、私はじぶんが翻訳をしたこの絵本がますます愛おしくなるのです。

今年の母の日は、新型コロナウイルスの沈鬱な翳(かげ)りのなかにあります。

ひとりひとりの大切なおかあさんのことはもちろんですが、すこし範囲を広げて、さまざまな状況にある子どもたちにとっての母なる存在について考えるきっかけとしていただければ幸いです。

なかがわ ちひろ

アリスンからみなさんへのメッセージ

さいごに、アリスンから、みなさんへのメッセージをお届けしましょう。
ひとあし早く暗雲にのまれてしまったアメリカからの便りです。


Someday(「いつか」)

地球を覆いつくすパンデミックのさなか、家の中で身を寄せあっている子どもと親たち、祖父母たちの姿を、わたしは思いうかべます。なかには、じゅうぶんな食べ物や安心できる住まいをもたない人たちもいるかもしれません。

著者のアリスン・マギーさん

もしあなたが今とても苦しかったなら、あえて視界を狭めて「その日のことだけ」「片足を1歩前に動かすことだけ」を考えてください。

そしてまた、視界をぐっと広げて、はるか遠くのことを考えると、息がつけるようになるのも、ほんとうです。

わたしはよく、わたしの人生よりもずっと先の未来のことを考えます。

いつの日か、この美しい星に今以上に思いやりに満ちた社会がひろがって、わたしたちの子どもたちは、より良い世界を生きられるかもしれない。その大きな希望が、わたしの心の混乱を整えてくれるのです。

個人より公共の利益を重んじる美徳をもつ日本のみなさんへ、敬意とともに。

ハッピー・マザーズデイ。

アリスン・マギー


なかがわ ちひろ 翻訳家
Chihiro Nakagawa

10歳のときに「いつかおおきくなったら……絵本を翻訳する人になりたい! 」と思ったことがきっかけで、アメリカへの高校留学、芸術大学の卒業を経て、子どもの本づくりの世界へ。以降、創作絵本や海外絵本の翻訳など、さまざまな分野で活躍。創作に『かりんちゃんと十五人のおひなさま』(偕成社)、『天使のかいかた』(理論社)、『きょうりゅうのたまご』(徳間書店)、翻訳に『どうぶつがすき』(あすなろ書房)、『ちいさなあなたへ』(主婦の友社)、『せかいでいちばんつよい国』(光村教育図書)など、作品は多数にのぼる。

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