「ポストコロナ」米中いずれも勝者になれない訳 「それ以外の世界」が新秩序のカギを握る

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中国のこうした動きはポストコロナの国際秩序にとって有益に働くのか否か、それは戦後の「自由で開かれた国際秩序」とはよほど違う秩序構想なのでしょうが、それではいったい、それはどういう理念と原則に基づくものなのか……。

細谷:冷戦の時代には、国連を舞台に米ソ両陣営が激しく対立するのは日常でした。国際機関は各国の国益の調整の場としての役割を担っていました。ところが、ポスト冷戦の世界で、我々はそれを忘れ、夢を見ていたのだと思います。今回の感染症はまさにそうですが、気候変動にしろ、核不拡散にしろ、国際機関に過剰な正義や倫理を求める傾向が生じました。しかし、それは幻想だったのです。

例えば、事務総長の人事にはもともと大国、つまりアメリカやソ連などの意向が強く反映されていました。冷戦後の世界でも、アメリカに反旗を翻したブトロス・ブトロス=ガリ事務総長が一期での退任を強いられ、その後任にアメリカの要求により従順なコフィ・アナンが座ったのは記憶に新しいことです。

一方で、アメリカやかつてのソ連に代わり、現在では中国が国連や国連機関を自らの意向に沿って動かそうとし始めているというのは、新しい動きだと思います。

他方、中国の行動に批判が集まることには、それなりの理由があります。国際社会で優位な地位を得て、指導力を発揮するには、相応のコストを払わなければなりません。ですが、中国はそのコストを、財政的な支出で十分だと誤解している節があります。「一帯一路」にも同じ発想が見受けられます。しかし、コストは、お金と同じ意味ではありません。国際社会から信頼を得て支持されるには、つねに良識に基づいた合理的判断や、一定の道徳的な権威が求められます。ときに国益を犠牲にすることがあっても、倫理や正義を通すことも、そのようなコストなのです。

アメリカは1901年に大統領に就任したセオドア・ルーズベルト大統領が国際社会でのプレゼンスを拡大するようになってから、1945年の国連発足時に指導的な地位に立つまで半世紀を要しました。孤立主義的な伝統が強かったアメリカの国民が、そのような国際的な責任を果たすことに抵抗があったからです。同じように中国が国際社会で指導的地位に立つには、長い時間が必要だと思います。今はラーニング・プロセスなのだと思います。

今後、中国が国際社会で、ときには国益よりも国際公益を重視し、過大な負担を背負って指導的役割を担う方向に進んでいくのか。あるいは、国際社会が自らの思い通りには動かせないということを学び、アメリカの現政権のように自国中心主義の殻にこもり、国際社会から後退していくのか。どちらに向かうのか流動的ですが、いずれにせよそれは国際社会に巨大な影響を及ぼすことになると思います。

米中デカップリングの行方――あらわになった脆弱性

船橋:ポストコロナの国際秩序を、EUと国連に関連して議論しましたが、次は国際秩序に大きな影響を及ぼす米中関係に移りたいと思います。両国はさらなるデカップリング(分離)の道に進むのかという問題です。貿易戦争で両国の緊張が高まる中で、今回のパンデミックは発生しました。その対応で、米中両国の抱える危険性や脆弱性もあらわになったと思います。

中国は国際社会で信頼されるために克服しなければならない問題を幾つも抱えています。いずれも専制政治体制の特徴ですが、指導者の無謬性、人権の軽視、不都合な事実の隠蔽や情報改竄の体質、国民との社会契約の不在などです。習近平は3月10日に武漢で「勝利宣言」を出しましたが、あの体制の下では政治指導者がそう宣言した以上、政治的に今後は感染者の数も死者の数も大きく増やすことはできません。勝利宣言を出した以上、勝利し続けなければならないからです。

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