コロナ「重症患者」を実際に治療した医師の証言 喫煙と肥満は危険因子、若年でも油断できない

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──重症化した場合はエクモが有効、という報告もありますが、後遺症もなく回復されているのでしょうか?

エクモの治療で重要なポイントは、相当に熟練した集中治療室の管理が必要であること。医師だけではなく、臨床工学技士が24時間体制で張り付くし、看護師のスキルが大きく影響する。当院では、新型コロナ患者にかかわるすべてのスタッフの力を結集し、「チーム医療」によって患者の命を守っている。

もう一つのポイントは、リハビリ。エクモを使うほどコロナが重症化すると、ICUに入っている期間が非常に長くなり、肺の回復後に「体を起こす」リハビリが必要となる。ただ、理学療法士が感染防御をしながら、リハビリを行うのは非常に難しい。そうすると1日の大半は寝たままになり、社会復帰のレベルに持っていけないという問題が、全国的に懸念されている。

──新型コロナの影響で、医療崩壊してしまうのではないか、という懸念がありましたが、現在はどのような状況でしょうか。

このままでは無理かもしれない、と危機感を抱いた時もあったが、「自粛効果」があって、新規の患者は減っている。軽症者のホテル利用開始も有効だ。

搬送依頼を全て受け入れできているわけではないが、大阪府では、新型コロナの重症者を多施設で分担しているので、医療崩壊はしていないと思う。ただし、中等症以上の患者の入院期間が長くなっていることは引き続き課題。

──クラスター追跡で感染経路を特定していましたが、現在はどうなのでしょう。

大阪府の場合、4月の頭くらいまでは感染経路を追えたが、その後は明確な経過がわからない方が大半になった。飲食店での感染の可能性が高いとか、患者さん本人はどこにも出掛けていないのに同居で通勤など外出を続けている子供さんたちから移ったとしか考えられないような患者が増えていた。

N95マスクが足りず使い回している

──医療現場の物資が不足していると聞きますが、改善されましたか?

絶対的に不足している。例えば、PPE(個人用感染防護具)のガウンは、使い回しこそしていないが、節約のために着用する人数を制限して、1回着たら患者のいるゾーンに入ってしばらく出てこない、という工夫をしている。

だが、これが非常にスタッフに負担がかかり、ストレスが大きい。あと、N95マスク(※感染防御用マスク)も非常に足りない。先週からは、一度使用したN95を、72時間休ませてから再使用している。普段では考えられないやり方だ。

《インタビューを終えて》

新型コロナから命を守る「最後の砦」が、堺市立総合医療センターのような医療機関だ。

それなのに、今でも現場ではマスクの使い回しだけでなく、フェイスシールドを手作りしたり、消毒液の調達に苦労するなど、通常ではありえない対応が続いている。医療スタッフを感染リスクにさらしてしまうことは、絶対にあってはならない。政府や自治体は、医療現場の感染防護用品の不足を一刻も早く改善する責務があるはずだ。

現時点では、わからないことが多い新型コロナだが、今すぐタバコを止める意味はとても大きいことは確かなようだ。

岩澤 倫彦 ジャーナリスト

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いわさわ みちひこ / Michihiko Iwasawa

1966年、北海道・札幌生まれ。ジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。2016年、関西テレビ「ザ・ドキュメント 岐路に立つ胃がん検診」を監督。2020年4月、『やってはいけない、がん治療』(世界文化社)を刊行。近著に『がん「エセ医療」の罠』(文春新書)。

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