「初代レガシィ」開発者が明かしたヒットの核心 190Eを目指した辰己英治氏の「神の一声」

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辰己氏が考案したフレキシブルタワーバーは、ただ補剛をするだけではなく「モーメントを取らない補剛」のアイデアとして、通常はリジット結合されるタワーバーの真ん中をピロボールで締結させた。

STI製フレキシブルタワーバー(写真:SUBARU)

通常のタワーバーの約2~2.5倍の値段ながら、「サスペンションを変えずに走りが変わる」、「運転が楽になる」という高い評価も相まって、累計10万本を記録。アフターパーツとしては大ヒット商品となった。

STIがチューニングを手がけるコンプリートモデルには必至アイテムとなっている。

――フレキシブルタワーバーで得た辰己理論は、最新のスバル車にも入っているのでしょうか?

辰己:現行「インプレッサ」から採用されている「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」がそうです。大きく変えることができるチャンスに「いいクルマにするには車体はどうあるべきか」と、私が富士重工時代に一緒にやってきたメンバーが具体化させました。

新型レヴォーグは、それをさらに磨き上げて「SGP+α」といった車体に仕上がっています。量産車の車体は、開発初期の段階である程度決まってしまいますので、開発チーム全体が「いい走りとは何か」をしっかり理解している、ということでしょう。

辛口評価の辰己氏は新型レヴォーグをどう見る?

新型レヴォーグは、2020年後半に発売が予定されているが、辰己氏はすでに試乗済みで、そのときの印象をこう語る。

「実は乗るまでは『もしダメだったらどうコメントすべきか』と悩みましたが、乗って安心しました。今までのスバル車とは質が違っていて、特にドライバーとの一体感は別次元と言っていいと思います。これから発売までの時間の磨き上げ方次第では、欧州車を超える走りが実現できると思います」

東京モーターショー2019で初公開された新型「レヴォーグ」のプロトタイプ(写真:SUBARU)

辰己氏は、たとえそれがニューモデルの晴れの舞台であっても、「スバルの実力はまだまだ……」、「もっとレベルアップが必要だ」と包み隠さず話す人物だ。そんな辰己氏がここまで高い評価をした自社モデルは、過去になかった。

新型レヴォーグは、かつて初代レガシィがそうであったように、エンジン/シャシー、さらに安全支援システム「EyeSight」も含め、全方位で刷新される。つまり、初代レガシィから築き上げた「走り」が、31年目にしてより高いレベルへと引き上げられる……というわけだ。辰己氏の評価こそ、その確たる証拠ではないだろうか。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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