「初代レガシィ」開発者が明かしたヒットの核心 190Eを目指した辰己英治氏の「神の一声」

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――「世界一」と言ってもさまざまな指標がありますが、2代目レガシィで目指したのは?

2代目「レガシィ」は1993年に登場した(写真:SUBARU)

辰己:それは、いまだにエンジニアが悩んでいる部分でしょうね。私は操安性を担当していたので、「世界一気持ちのいい走りはこうだろうな」という考えはありました。

それは 「クルマの動き」です。それを実現させるには車体が重要だと。レガシィは世代が変わるたびにボディ剛性を上げていますが、実際には思ったほどよくならないことも……。

――車体剛性は高い方がいいと言われていますが?

辰己:もちろん剛性は大事ですが「どこまで上げたら満足なのか」という疑問が私の中にありました。そうして中で、欧州車の車体や補剛パーツなどを調査すると、同じようで違うことに気がつきました。

一言で言えば「モーメントを取らない補剛」であることです。例えるならば、首都高などにある橋脚の取り付け部はピン構造になっていますが、橋の上をクルマが走る状況の映像をスローモーションで見ると、橋脚はしなっています。自由に動くことで力を逃がしているのです。これを見たときに「ボディ構造も同じなのでは」と直感しました。

――車体は“しなやかさ”も必要であると。

辰己:欧州車の車体を調べると、パネルの組み合わせなどは、どう見ても剛性を上げているように思えない箇所がありました。つまり、車体は硬いところと柔らかいところが必要だと。ただ、車体は簡単に変更ができません。手を入れたら衝突・音など、すべての試験がやり直しになります。つまり、わかっていてもやり損ねると何年もできません。

STI移籍後のパーツ開発にも生きた

そんな中で辰己氏が考案したのが、「フレキシブルタワーバー」だった。辰己氏が2006年にSTIに移籍してから登場したアイテムだが、そのアイデアは富士重工時代から考えていたものだったという。

ボディに手を入れられない……、それはつまり「足す」ことはできるけど「引く」ことはできない、ということ。そこで、ボディが持つ柔らかい部分を生かすために、硬い部分をもっと硬くすることで、相対的なバランスを整えるという理論だ。

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