内部留保多い日本企業はコロナ恐慌に耐えるか 手元流動性あっても油断大敵、カギは現預金だ

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日本の上場企業の社内留保463兆円という数字は、この社内留保と利益剰余金を合計した金額と言っていい。さらに、ここに「法人企業統計上の内部留保」というものもある。2016年度の数字では次のような構成になっている(金融業、保険業を除く、財務省「法人企業統計調査」より大和総研調べ)。

社内留保(損益計算上の企業に残る最終利益)……30兆円
内部留保(貸借対照表上に計上される蓄積された利益剰余金)……406兆円
法人企業統計上の内部留保(資金調達の内訳の中にある数値)……48兆円

そもそも日本企業が内部留保をため込むきっかけとなったのは、リーマンショックや安倍政権誕生と大きな関わりがあると考えられている。いつの間にか「内部留保=企業の貯蓄」のようなイメージをもたれてしまっているが、日本企業の内部留保が急速に増えたのもアベノミクスと大きな関係があるということだ。

内部留保=現預金ではないのだが、日本企業の現預金がここ10年以上、増え続けてきたのは間違いない。法人企業統計によると、企業の現預金が増え始めたのはリーマンショックの2008年前後からだ。

以前の企業は、現在の欧米の企業同様に現預金の積み上げを回避する傾向にあった。それが、2008年度のリーマンショックを機に日本企業の現預金は加速度的に増していく。実際に、2000~2009年度までの企業の現預金の伸びは年率1.2%だが、2009年度から2016年度には年率4.3%と伸びている。

現預金は150兆円→211兆円に

金額にして、2009年度には150兆円程度だったのが、2016年度には211兆円にまで増えている。この背景には、日本銀行による異次元緩和の影響が大きい。日銀が量的緩和で市中の日本国債を大量に買い入れたため、その資金が巡り巡って家計や企業の現預金に回っていく。

しかも、企業はその現預金を従業員の賃金や株主への配当に回さずに、海外の企業買収(M&A)資金などに回した。本業のビジネスでは稼げないから、海外の利益の高い企業に投資して、利益を稼いできた。それが、日本企業の現実と言っていい。

さらに、M&Aなどの資金を銀行から借り入れて行うのではなく、内部留保の現預金で行ってきた。その背景には、借り入れのようなリスクを取りたくないというのもある。また、内部留保が多いと銀行に対する信用度が増すために、資金調達の1つの方法になっていると考えられる。

無借金経営の企業が多いのも、そうした背景があるからだ。その反面で、株主からは増配を求められ、政府からは「内部留保課税」を課すプレッシャーをかけられる。従業員からの賃上げ要求は、労働組合を形骸化することで免れてきた。

実際に、実質無借金企業の割合は、2008年度には37.3%(財務省財務総合政策研究所調べ、TOPIX500から金融機関を除いた企業)だったのが、2017年度には51.7%(同)に達している。アメリカの18.3%(2017年)に比べれば大きな差だ。

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