また、心配なのはパンデミックで世界の貿易がストップしている状況では、三井物産や三菱商事といった総合商社、そして観光収入が大きい東日本旅客鉄道なども大きな影響を受けやすいことだ。
もっとも、こうした社会インフラの要素が強い企業は政府が支援するだろうが、問題はリーマン級の「大きすぎて潰せない企業」が、今回は同時に複数出てくる可能性があることだ。政府が躊躇せずに救済できるかが大きな課題だが、安倍総理も、黒田日銀総裁も日常的に「躊躇せずに行動する」と言っておきながら、いざとなると躊躇しまくっていることが気になるところだ。
「現預金を除く内部留保」が多い企業は要注意?
本来、日本企業の内部留保が多いのは国際的にみるとやや異常だった。欧米系の投資ファンドなど「モノ言う株主」は、再三にわたって内部留保は株主に還元すべきだと主張していた。配当もしくは自社株買いによって株主に還元することで、利益を株主に還元するのが資本主義社会の考え方だ。
その点、日本企業の多くは従業員の低すぎる賃金に充てるでもなく、株主への配当も怠ってきた。では何をしてきたかと言えば、海外の株式や債券に投資してきた。
実際に、406兆円もある利益剰余金は、現預金の211兆円を除いた資金は別の形に変えている。これまで紹介してきたように残りの200兆円弱の資金が「投資有価証券」や「設備投資」「不動産」になっているわけだ。
言い換えれば、今後は「現預金を除く内部留保」が多い企業というのは、世界的な景気後退局面の中で、損失を出してくるケースが増えるはずだ。とりわけ、短期保有有価証券などはすでに大きく額面割れしているはずであり、今後相場が急速に回復することも望めない。企業によっては、意外と財務体質が弱いことが明らかになるケースも増えてくるはずだ。
このパンデミックがいつ終息するかわからない現状では、今後はさまざまなリスクに備える必要がある。歴史的にみると、例えばペストが流行した14世紀のヨーロッパでは、それまで最も人々に信頼され、権力も握っていた教会が「信者を守れなかった」という理由で、急速にその権威を失ったと言われる。
現在、圧倒的多数で権力を握っている自民党も、コロナショック後には消えているかもしれない。それだけの覚悟を持って企業も生き残りを図る必要があるということだ。
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