《中国・アジア市場攻略》セブン&アイのファミレス大作戦、中国の流通を変えた男が「洋食」で新市場に挑む
外食市場は二極化 拡大する中流層がカギ
実のところ塙は、中国で勤務していた03年ごろからファミレスの中国進出を本社に提言してきた。「北京五輪や上海万博などの国際的イベントを経験することで、中国でも食生活の洋風化が間違いなく進む」という確信ゆえだ。
ヨーカ堂で食品を担当していた頃、塙はソウル五輪で韓国人の食生活が大きく変化するのを目の当たりにした。その経験から、「北京でも、五輪で潮目が大きく変わる」という確信を得ていた。
折しも中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった時期で、無農薬・有機野菜への需要が急速な勢いで伸びていた。
「いつになれば中国の人々が安心して生野菜のサラダを食べられるようになるのか。洋食の大衆化を考えるときには、まずそれがいちばん大事な要素」と塙は語る。
安全な生野菜の調達には、チルド(冷蔵)配送網の整備が必要だ。日本の場合は64年の東京五輪、70年の大阪万博を機にそれが実現した。北京でも五輪開催で物流インフラは大きく改善した。「いよいよレストランの時代が来た」と塙は意気込む。
五輪前の進出を期待していた塙にすれば、実現のタイミングはやや遅れた。しかし、まだまだ開拓の余地は大きいと踏んでいる。それは、中間層の拡大が「洋食」への需要を大きく膨らませると見ているからだ。
北京でヨーカ堂が開店してからの10年余りで、1号店の十里堡店の客単価は6割弱、2号店の亜運村店では同6割強上がった。中間層の所得上昇による生活の変化を、確実に取り込むのが成功へのカギだ。
北京の「洋食」は、平均客単価が70元を超えるようなレストランと、10元台で食事が済む低価格のファストフードに二極化している。だが、その中間はぽっかり空いている。
従来のレストランに比べると割安だが、ファストフードよりも満足感が得られる業態。そういう店を日常的に使いたいというニーズは確実に育っている。