トランプ政権の失策でアメリカの危機は深刻に

NYはピークアウトでもコロナは全米に拡散

コロナ対策をめぐってトランプ政権は迷走した(写真: REUTERS/Leah Millis)

アメリカの医療現場では4月に入ってから個人防護具(PPE)の不足で、レインポンチョあるいはゴミ袋、そしてスキーのゴーグルをかぶって新型コロナの診療にあたる医師や看護師も出ている。一部の病院では医療用マスクが不足し、本来は患者ごとに交換すべきところを、何度も同じマスクを利用する事態にも陥った。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によると4月上旬時点で全米の医療従事者の9000人以上が感染していたという。

ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)によると今月、アメリカの多くの州でコロナ死者数がピークを迎えている。感染拡大の中心地ニューヨークでは社会的距離戦略(social distancing)が功を奏したのか、死者の増加ペースは鈍化傾向となり、同州のアンドリュー・クオモ知事は「最悪期を脱した」と語った。だが、西海岸、東海岸で拡大した感染は、現在、医療施設が十分に整っていないアメリカ内陸で急速に広まりつつある。したがって、まだアメリカはコロナ戦争の真っただ中にある。

最新予想では、ホワイトハウスが3月末に発表した10~24万人の上限値ほど死者は増えない見通しだ。とはいえ、全米で約3万人の死者が出ており、コロナ戦争の死者はすでに9.11同時多発テロ事件の死者の10倍以上に達した。コロナ危機が沈静化すれば、9.11委員会のように議会で本件の政府の対策を事後評価するレポート(After Action Report)が作成されるのは必至だ。

だが、コロナ戦争で危機に陥った責任は誰にあるのか、その追及はすでに始まっている。トランプ政権は前政権、議会民主党、中国、州知事、WHO(世界保健機関)などに責任転嫁しようと試みているが、現政権のパンデミック対策には大きな問題があったことが明らかとなりつつある。トランプ政権の不十分な備え、感染拡大時の対応の遅れ、そして非常時に欠かせない大統領のリーダーシップの欠如の3点が事態を悪化させた。

オバマ前政権による警告は無視された

1918年のスペイン風邪以来の甚大な被害をもたらしているこのパンデミックは、誰がアメリカの大統領であっても万全の準備は不可能であったであろう。パンデミック発生自体の責任は当然、トランプ政権にはない。しかし、政権発足時からパンデミックに備えるべきといった注意喚起は幾度もあったにもかかわらず、政権はその機会を見逃してきた。

最初の警告はトランプ政権発足直前である。2017年1月13日、ホワイトハウスの隣、副大統領執務室のあるアイゼンハワー行政府ビルでオバマ前政権からトランプ政権に国土安全保障に関わる引き継ぎが2時間弱行われた。そこには国土安全保障省のジェー・ジョンソン長官(当時)とジョン・ケリー次期長官(当時)を筆頭に新旧政権の高官が出席したが、パンデミックも議題に含まれていたという。

次ページ初動の遅れ、背景に組織の問題
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 賃金・生涯給料ランキング
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
おうちで稼ぐ、投資する!<br>在宅仕事図鑑

コロナ禍の下、世代を問わず広がったのが「在宅で稼ぐ」ニーズ。ちまたにはどんな在宅仕事があり、どれくらい稼げるのか。パソコンを使った「デジタル小商い」と「投資」に分け、誰にでもできるノウハウに落とし込んで紹介します。

東洋経済education×ICT